霊能局からやってきた担当者と打ち合わせに同行する。
荒事が得意な小兎姫たちと違ってこちらはホワイトカラーの人たちだ。
彼らの目的は裁判所で差し押さえられた物品の換金である。
企業倒産などで差し押さえた資産リストをうちの会社に持ち込んで買ってもらうのだ。
幸いうちの会社は企業倒産とは縁遠い職業である。
幻想郷に携わる仕事をしていいこともあるというものだ。
景気にあまり左右されないからである。
公務員と同じかと言われるとそれも少し違う。
なぜなら公務員もまた景気が減速して税収が減れば多かれ少なかれ影響を受けるからだ。
幻想郷はある程度の計画経済が成り立っている。
経済システムの中枢を妖怪が握っているため、ムードによる景気減速が起りにくいのだ。
たとえば、顕界では大きな事件が起こってムードが悪化すると途端に資本の引き上げが
起こる。 引き上げは引き上げを生むから結果的にお金の巡りが悪化し、
景気後退を引き起こす。 一度ムードに支配されれば易々と回復するのは難しい。
しかし妖怪たちは寿命の長さから短期的収益より長期的収益を重視する傾向がある。
短期的な利益を狙って投資することは少ないのである。
さて、今日の件のように顕界で景気が減速すると、幻想郷では品物が増える現象が起こる。
企業倒産が相次ぎ、そこで作られていた商品が幻想入りするためだ。
幻想入りというと曖昧な表現に思われるかも知れないが、具体的には
企業倒産によって差し押さえられた在庫などを当社が安く買い付けて幻想郷に
送っているのである。 これが幻想入りのメカニズムだ。
同じように廃番商品も廃棄前に当社に買い付けられる場合が多い。
今日廃棄するだけでもお金がかかるので製造業にとってはとても有り難いらしい。
同行するのはこれら商品が幻想郷で売ることができるかというのを現場の目で
判断するためであるという。 一応そこそこの妖怪については判断できる。
商品は概ね日用品ばかりだ。 最近では自称現人神のように顕界の商品もよくわかる者もいるから
以前よりは色々考えなくて済んでいる。
それでも予想できないのが紅魔館の連中。
彼らは全くわからない。 あの気まぐれにはほとほと手を焼いている。
なんとかならないものかと思う。
たまに会社から強化商品と言われて得体の知れない商品を売ってこいと言われるが
本当に売る側の気持ちになってるのかと言われると疑問だ。
幻想入りする商品はいずれも一癖もふた癖もあるものばかり
これらをクレームなしで売るのは毎回頭が痛い問題だったりするのである。