□月 ●日  No832 会社に芸能人がやってきた


うちの会社に芸能人がくるというので皆大はしゃぎである。
浅間はサインを貰うんだと息巻いているし、岡崎に至っては休みなのにわざわざ出社して
見物しようとする始末である。
単に北白河がわざわざシフトを調整していたせいかもしれないが。


ともあれわくわくしながらその人物を待っていると
この場に似つかわしくないおばさんがやってきた。
本当にそこら辺にいそうなおばさんだったので、ガードマンを呼ぼうとしたら
何と彼女がその芸能人だったようだ。 浅間から服を引っ張られてようやく気づいた。
なんでもこの人物は自称霊能力者としてテレビの相談番組やトーク番組に
たびたび出演しているらしい。 こっちは幻想郷にいる時間が長いのですっかり
疎くなっていたのだが、巷では大人気だそうである。


そんな人物がうちの会社に何の用かと遠巻きに見ていたら何と朝倉に会って談笑している。
開口一番、朝倉のことを「先生」と呼ぶものだから皆で茶を噴いた。
北白河の引きつった顔は今でも忘れられない。


なんでも幻視したものを報告しているようだ。
一般的にこの手の占いは当らないことが常とされる。
だが朝倉との会話を横で聞いていたら思わぬことを言っていた。
ある有名芸能人が犯罪を犯しており近い将来報いが訪れるというのである。
自分の発言が当人の犯罪発覚に影響するのを防ぐため、とりあえず本人には
将来安泰と伝えたという。
玄爺の話ではこうした重大犯罪に関係する内容を見たときは、見えていないことにして
警察組織や魔術師指導員に指示を仰ぐのが通例なのだという。


よく霊能者の占いが外れるという話があるが
見えるものと言うことは違うこと言うことは知っておいたほうがいいみたいだ。


談笑が終わるとさながらサイン会になった。
どこで買ってきたのか色紙までも用意されている。
浅間が沢山の色紙をもってきて全部に書いて貰おうとしてボスに窘められたり、
無礼な行いをしたアホな人になんとスペルカードを使ってせみたりと
酷い一日になってしまった。
これからテレビの収録だそうだが、体力的に大丈夫なのだろうか
今から心配になった。