まあ年末になると忙しくなるのが畳屋さんである。
自宅の畳がそろそろ汚くなったので表替えしてもらうことにした。
畳というのは芯となる床と表面を覆う「ゴザ」で構成される。
床はとても頑丈で数十年くらいもつが、ゴザは10年くらいで張り替えないといけない。
うちの場合本当はまだまだ持つのだが遊びに来た糞妖怪どものせいでぐちゃぐちゃにされてしまった。
仕方なく前倒しして直すことにした次第。
顕界の畳はミシンで縫い付けるのでとても早い。 人間の手でやるとそれこそ一部屋やるのに
一日がかりがざらである。 本当によい時代になったものだと思う。
幻想郷でも畳替えのシーズンである。
幻想郷も顕界も畳のルールは驚くほど変らない。 強いて言うなら結界の外にある畳の芯は
発泡スチロール製が多いくらいだろう。
畳表は外の世界に比べると色合いが不安定である。どうせ一定期間が経てば紫外線で黄色くなる運命だ。
気にする必要はないだろう。
うちの社員寮でも沢山の畳職人が出入りしていた。
人間だったり妖怪だったり経歴は様々だ。
特に妖怪は5?ほどもある畳の床を針であっさりと貫いてしまうのがが印象深い。
師走となれば障子の張り替えも重要な仕事となる。
障子は水にぬらせてヘチマでこするのが定石だが、しばしば障子本体がとれないときがある。
建物の歪みのせいである。
そのとき顕界ではジャッキを使って持ち上げるのだが、幻想郷では妖怪が力尽くで持ち上げてしまう。
一カ所やると団子が一本買えるくらいもらえると言うので、ちょっと力自慢の妖怪が居ると
結構手伝ってくれる者が多い。
阿礼乙女の家で張り替えた畳のから拭きを手伝う。
明羅女史に頼まれたからにはやるしかないわけで、スタッフ一同ひたすら拭きまくる。
きちんとやらないとカビが生えるというので必死だ。
年齢を重ねるに従い阿礼乙女の体力が低下するので今のタイミングで表替えをすることになったそうだ。
それにしても彼女の家は広い。 結局一日がかりの仕事になってしまった。
家に帰って思い出した。
自分の部屋も拭かなきゃいけなかった。
泥にまみれた畳の上に布団を敷くわけにもいかず結局、ラスト六畳を拭き終わった時にはすでに
丑三つ時になっていた。