□月 ●日  No848 新種妖怪報告


年末予定表を配りに幻想郷を練り歩く。
うちの会社は新年も開いているのだが、取引先はそうはいかない。
そこで納期遅延の連絡を先にしてしまおうということになった。


人形遣いのアリス邸前で新種の妖怪を発見。
最初厄神様と勘違いしたが、明らかに背丈が違う。
勘違いしたのは基調色全般がそっくりなためだ。しかし巨大な帽子が違いを際だたせている。
メディスンに酷似した人形型妖怪と推察される。


一応会社に連絡。とりあえず写真を撮影して戻れと言われたので撮影を試みると
察知されたのか姿を消された。気配がそのまま残っている上空を飛んだとき独特の
空気の流れもないので多分光学迷彩を使用して隠れたものと思われる。
とりあえず撮影はしたが姿は満足に捉えられていないだろう。


こうした新種妖怪が出現した場合は、一応面倒な事務処理ならびに
新種報告書を書く必要がある。顕界から流れた妖怪かどうかを霊能局の櫻崎に確認して貰うためでもある。
だがこっちはそんな書類なんてへっちゃらだ。 新種妖怪を見つけると手当がでるからだ。
評価が高ければ一週間の生活費になるから燃えずにはいられない。
可能な限り特徴を書き入れて霊能局に送ると該当無しと言われた。
間違いなく新種妖怪のようだ。 第一関門突破である。


しかし朝倉があくまで写真撮影しないからには絶対的な判断が出来ないというが
魔法生物に似たような者がいるという。
妖怪初のマルチタスク型スペルカードを使う妖怪に似たものが居るらしい。
何故知っているのかと尋ねたら、人形遣いのアリスの家はかつての朝倉の家を改装したものだと聞いて
唖然とした。 魔界神様から譲ってくれと言われて明け渡したという。
魔術を試行するための実験施設や防御施設を持っていたが、丁度科学に傾倒したときに
処分したのだそうだ。 そのときに似た妖怪を見たという。
勘弁して欲しい。 


とりあえず無いよりはマシと思って上手く撮影できなかった写真を現像してみると
なんと姿がきちんと映っていたではないか。運が向いてきたのかと思いきや
それが決めてで新種じゃないとわかってしまった。
なんでも持っている道具のスペックを引き出す妖怪が居るのだそうで
彼女はまさにそれだということだった。
なぜ朝倉がそれを知っているのかと尋ねると、その家を建築するときに彼女の能力を再現しながら
建てていたというのだ。 
まさかとは思うが恐らく嘘はついていないだろう。でなければ魔界神様がわざわざ人形遣いのアリス邸に
採用するわけがないからだ。 残念だ。


私がメシ代と呻いていたせいなのか、恐らく口に出していたのだろう。
珍しく朝倉が晩ご飯を奢ってくれた。 選べるものがディナーセットのみだったが
妙に悪い気がしてしまった。 
「明日から馬車馬のように働け」と言われさえしなければだが。