□月 ●日  No884 チーフがチーフと呼ばれる前の回顧録I

なぜこうなったのか。 どこでどう間違えたのか。
田舎から上京して早幾年、私が何故ここにいるのかふと思い出す。


大学に在籍しながらどうにか公務員の資格を取った私はなかなか就職できないでいた。
どうしてもコネがなくて、いざ就職活動をしても採用して貰えなかったからだ。
とにかく個人的には安定した仕事に就けばいいと考えていた。
一度在籍してしまえば大変さはどこもあまり変らないと思っていたからだ。


進路担当者に相談するととある会社を教えて貰った。それが八雲商事だったわけだ。
所謂、民営化されている官営企業みたいな性質の会社で経営は至って安定しているようだった。
聞いたことのない商社であったが資本金の額もあるし会社もそこそこ大きい。
しかし、今思えば未だに求人が有ること自体を疑うべきだった。


仕事は至って普通の商社マンとしての仕事だった。
クライアントから注文を受けて商品を発注商品を用意する。
取引先はいい人ばかりだったし、忙しく半ばブラックではあったが満足することはできた。
そんなある日異動の辞令がきたわけだ。


最初驚いたのは給料が一気に引き上がったことだった。
秘密を守る上の誓約書を書かされた上でだ。 何か会社ぐるみでやばいことをしているのかと
最初思ったものだ。
まず最初に考えたのは密輸だった。 実際は予想の遙か斜め上の展開であったが。


最初に客として紹介された香霖はまだいいとして、上白沢を紹介して貰ったときは
本当にクライアントなのか半信半疑だった。
「見たものが真実」と言われたものの認めるまで時間が掛った。
空を飛ぶ少女の姿を見たとき 自分が立たされた立場にようやく気がついた。


妖怪の恐怖に初めて触れたのは、紅魔館という建造物の住人を担当していた同僚が大けがして帰ってきた時だった。
後でメイド長の下着を盗もうとしたことが発覚したのだが、知らない私は何と恐ろしいところにきてしまったと
戦慄したものだった。 全ては後の祭りだったのである。