□月 ●日  No902 夢幻館とエリーさん


幻想郷と顕界の間の境界部分の内ある程度行き来可能なスポットは複数ある。
それぞれ管理している組織が違っており非常に面倒である。
私が利用できるスポットも制限があり、時間がずれたりすると行けなくなることもある。
一定時間内に移動しないと境界が不安定になって危険だからである。
これは隙間妖怪でも同様で、何回か隙間を経由して境界突破というまだるっこしいことをしないといけない。
強引に突破すると結界を破壊することになり、修復する中間管理職狐が怖い顔をすることになる。


手違いで幻想郷から顕界に戻る時間がずれてしまった。
河童からの連絡に不備があり列車の部品交換に手間取ったためだ。
滅多にないことだがこうなってしまうと別のゲートを使用するしかない。
中間管理職狐に謝ってから、夢幻館経由のルートを選択することになる。
夢幻館というとうちよりも霊能局とつながりが深い。
一応風見女史のテリトリーなので個人的にはあまり利用したくない。
綺麗な人なんだけどね。


夢幻館を実質取仕切っているのは門番兼事務方のエリー嬢である。
そもそも夢幻館そのものがゲートのような役割を果たしているので門番という表現が宛がわれている。
門番というと紅美鈴女史が思い出されるが、あっちは武闘派でありかなり意味合いが違う。
事務方でありながら戦闘もそつなくこなすので結構重宝がられているようだ。
あまりに有能すぎて風見女史の仕事がないのではないかと思うくらいだ。


エリー嬢は顕界の情勢もきちんとわかっている珍しい妖怪である。
趣味の鈍器蒐集も引かれているネットのお陰ではかどっているらしい。
米帝の大統領についてとか、幻想郷政策の話にも食いついてくる。


彼女に事情を話して手動で幹線を引いて貰う。
朝倉が霊能局と話をつけてくれているので、こっちは合い言葉を間違いなく言って
面倒な手続きの後にようやく結界を突破する。
ここまで煩いのは幻想郷から物質などが戻ってくると色々と大変なことになるからだ。
歴史的大発見で済めばいいが、幻想郷に行ったものを顕界に紹介することはリスクが大きいのである。


エリー嬢の話では撲滅した筈の病気が幻想郷に残っている場合があるという。
蜘蛛妖怪の顔が脳裏に浮かんだが、どちらかというと顕界政府の意向と聞いて納得する。
どうでもいいが死神の鎌、幾ら使わないからって物干し竿代わりに使うのはどうかと思う。
しかも下着を乾かしているので目のやり場に困る。


顕界に戻って小兎姫に御礼を言ったら、最近エリー嬢がお局化しているとぼやいていた。
物干し竿の話をしたら櫻崎とセットでなんとも言えない表情をしていた。