□月 ●日  No929  邪神伝説


人形遣いのアリス専用の荷物を運ぶ。 人形の材料は幻想郷だけで自給するのは色々と大変だと言うことで
いろいろ届けているのだが彼女の手先の器用さにはいつも驚かされる。
丁度鴉天狗が彼女を取材中だった。 インタビューを盗み聞きすると、人形制作のキモについて語っているようだった。


アリスに言わせると人形にとって一番重要な部分は顔であるという。
基本的には可愛い顔にしないといけない。 何かが込められた顔というのは謂われを吸収する要因となるからだ。
一般的には余計な印象を与えないように無表情が望ましいとされる。
笑顔がいいのかというと実はそうではないらしい。 
笑顔は笑顔で何か違うものを引き寄せるのだそうだ。


では無表情だったら何でもいいのか? 答えはNOだ。
人形の中にはあまりに凄い造形の為に全く違う謂われを得た人形が存在するのである。
これらは「邪神」と呼ばれ、下手な神様よりも信仰を集めた形で幻想郷に送られるのである。


邪神は幻想郷に到達した時点でだいたい退治される。 存在自体が罪だと言わんばかりだ。
人形の顔をきちんと作らないと恐ろしいことになる好例である。


二人の話に戻す。
人形遣いのアリスは何を考えたのか、鴉天狗に自分も人形を作らないかと持ちかけた。
どうせ作るのだから似た姿の人形を作ったほうがいいというのである。
それって所謂映し身という奴でやばいのではと思いつつも後で何か言われるか怖いので様子を見たら
鴉天狗も興味本位で人形つくりに同意したではないか。
彼女にしてみれば新聞のネタになればなんでもいいのかもしれない。
アリスの狙いは行動の制約だろう。


しかし鴉天狗が作った奴はアリスや私の予想から遙か斜め上を突っ走っていた。
まんまるの輪郭に目は狐のように細く、顎はしゃくれていて何か得体の知れない
なにかになっていた。
確か鴉天狗の名前は「シャメイマル」と言った筈だったがこれでは「キメエマル」だ。
これではあまりに本人と似ていないため、映し身も上手く機能しないだろう。


アリスはこの人形を見てどうしようか本気で迷ったようだった。
廃棄するにも作りましょうと言った手前どうすることもできず とりあえず簡単に動かす
魔法を掛けてみた。
するとこのキメエマル、この場から姿を消してしまったではないか。
かってに目の前からいなくなったし 一定時間経つと燃料切れで元の人形に戻るという
ことでまともに探さずに放置することにした。


聞けば、鴉天狗の姿をした邪神もとい人形が氷妖精をおちょくっていたり
自称現人神を盗撮したり好き勝手やった後、
なぜか明羅女史に一刀両断されたらしい。 なぜ明羅女史なのか
キメエマルがなにかを映したのかはわからないが取り敢ず一件落着


かもしれない。