□月 ●日  No930 梅と幻想郷


今年も白玉楼や無縁塚あたりなどを中心に梅が見頃を迎えている。
梅はリリーホワイト族が出現する直前に咲くとされ、春の訪れを予告する存在として縁起がいいものとされている。
幻想郷も顕界でもそれほど扱いが変わらない存在でもある。
歴史も古く、白玉楼の主人が存命の時にはすでに梅があったといわれ、違いもそれほど無いのが面白い。


白玉楼の主人に言わせれば、昔は薬効狙いで家に競って植えていたという。
観賞用だと思っていたが、最初から食べるのが目的だったようだ。
最初はどちらかというとお菓子扱いだったらしい。 塩漬けがメインになったのは白玉楼に住み始めてからだという。
梅は実だけでなく木そのものも無駄ではなくしばしば器としても利用されていたと言っていた。


阿礼乙女の邸宅も梅が見頃である。どうしても虚弱体質になる阿礼乙女の場合は梅干しの存在が欠かせない。
古来から伝わる梅酒やお茶あたりを飲むのなら顔を出すのも悪くない。


メトセラ娘が永遠亭を莫迦にするときに利用されるのも梅だったりする。
あの当時の永遠亭は建物の維持と発見されないようにするのを優先していたため時間の流れが少しおかしかったらしい。
そのためか永遠亭の外では梅が咲かずしばしばメトセラ娘が自慢するのに利用していたのだという。
見た目が綺麗でしかも薬になりうる魔法の植物という触れ込みだったらしい。
ちゃっかり梅の実を薬屋に売ると凄い価格で買い取ってくれたという。 


なぜ永遠亭で梅が不思議な扱いになっていたのか、それは月には残念ながら梅が見られないことが関係しそうだ。 
意外に思われるかも知れないが桃の方が歴史が古いらしい。
ただ、月兎が薬効狙いで地上に降りては梅の実を持って帰ることは知られている。
殺菌作用が強い梅の実だが、月では殺菌作用そのものが穢れを祓う物として珍重されている。
しかし植えるのは何故か避けられている。 連中はいろいろ勝手に穢れているとか穢れていないとか序列をつけたがるから
きっと何かしらの理由はあるのだろうと思う。


余談だが幻想郷の梅干しと顕界の梅干しを比較すると顕界の梅干しがいかに色々工夫されているかわかる。
自称現人神が、梅干しを食したところ味がまるで違うとクレームをつけてきたので、外の世界から梅干しを
仕入れてきたこともあったほどだ。
そのときは朝倉のミスで発注が上手くいってなくて仕方なく岡崎から分けて貰ったのだが、それ以来
二人は個人的な付き合いがあるらしい。


梅とは歴史も地域も飛び越える不思議な存在であると改めて感じる次第である。