□月 ●日  No1273 家無き子?


永遠亭の補修工事が相次いでいる。
症状はいずれも同じ、所謂低温炭化という現象で、一般的にはキッチンで起こるものなのだが
それが居間など本来起こりえない場所で起こっているのが特徴である。
ここに一体何が起こっているのか?


詐欺師兎に聞いたら、メトセラ娘をたまに泊めているとのこと。
今まではこんなことはなかったというのでうちの出している建材に問題があるのではないかという、
あまりに言われるので一応駄目になった建材を回収して本来はやらないのだが一度、NITEで調べて貰うことに。
ちなみにNITEとは国が運営している商品を評価する機関でリコールにまつわる商品の問題調査をやっている。
結果としては商品に問題はなく、謎の熱源が置いてあるためという結論になった。


唐突であるが、メトセラ娘には家がない。
まず根本的理由として彼女に住環境のメリットがあまりない。
野宿しても凍死する心配もなく、いざとなったら自分が燃えるので野生動物に襲われる
心配もないと来ている。 まさに人間たき火と言える代物だ。


夏の暑さの場合は自ら体温を上げて外気温との差を設けることが可能である。
本来なら体調不良に陥るのだが彼女の場合は体調不良にならずに体温だけを上げることが可能だ。
これにより夏の暑さも容易に凌ぐことが可能である。
彼女の場合は雨露さえ凌げばあまり問題ないので、これまでは岩陰で休むケースが多かったらしい。


しかし彼女も人間である。どうしても屋根のある場所で寝泊まりしたいときがある。
ところが彼女の場合一般建造物で寝泊まりすると、たまに夢をみて発火する場合がある。
だから上白沢邸などでは泊めることはできない。


そこで永遠亭を貸すケースがある。 永遠亭は変化防止システムを持っていて
メトセラ娘が寝泊まりしても火災になることは無いはずだった。
しかし永夜事件があったあとは永遠亭も度重なる改装工事を行っている。
どうやら永遠亭は変化する存在へと変貌してしまったようなのだ。


そうとわかった以上メトセラ娘を泊めるのは色々リスクが高いのだが、
姫様の意向で追い出すのだけはやめて欲しいと言われた。
気づいて気を遣わせたくないといったところか。 単純に予算にものをいわせて
建材を交換できるようにモジュール化して対応することになった。


難儀な話だが、泊まりに来るのもたまにだそうなのでそれ位は大目に見ているのだろう。
ちょっと微笑ましい話でもあった。