□月 ●日  No1213 穢れセンサー


久々に月の都にお邪魔する。大半の作業などは穢れの問題からルーコトたちなどに任せるものの
いくつかの判断業務や確認は現地で執り行う必要があるためである。


最近気づいたのだが、月の都では穢れに対するアレルギーが強いくせに懐に入るとその運用はとても
適当である。 
綿月姉妹の話では、穢れた民は本来月に入れるわけがないという前提があるようで極端に平和ボケ
している状態であるという。 数百年単位で侵入を許していなければそうなるのも仕方ないのかと
思ったりもする。
運用の適当さは永遠亭を見ればよくわかる。 穢れていようがなんだろうが接触そのものに
それほど警戒心は存在しない。月兎の態度を見ればよくわかることだ。


では月人たちは穢れをどのように見分けていたのか。
メンタル的なものと思っていたけどちょっと違う。
ここで白玉楼を思い出してみる。 穢れがない冥界では漬け物が漬からないと言われる。
つまり白玉楼も月の都も発酵が大きく制限されるわけだ。
さて、人間の身体の中では常に発酵が行われている。 そして発酵したものは臭気となって周辺に漂う。 
たとえば体臭だったり、おならだったりするわけだ。 
月面人の穢れセンサーの正体は単なる臭気センサーと思って間違いない。
これは顕界でも既存技術である。 エアコンや空気清浄機の空気センサーみたいな
ものだと理解すればよい。


おそらく月面に移住した月人にとって大気組成の維持が命題の一つだったのだろう。
宇宙生活ではおならはとても危険な存在だ。そうした考え方が穢れセンサーとして
残ったのではないか。 そう思えてならないのだ。


白玉楼の主人やお庭番が月に長期滞在できたのはそのような事情があるわけだ。
彼女たちはにおいを発しないのである。 それなら確かに長期滞在可能だ。
もっとも博麗の巫女が街のど真ん中でさらし者になっても月人たちが
いなくなったりしないことから、その辺の基準もかなり曖昧なのではないかと
思えてならない。
そうでなければ私が月の都に入ることなんてできるわけがないのだ。


ここで嫌な事実に気づいた。
ヴァンパイアの主人が囮に選ばれた理由はもしかしたら
もしかするのかもしれない。その理由をここで書くのは些か無粋というものだろう。
ヒントは香水では消えないということである。