□月 ●日  No939 浅間伊佐美と保険


幻想郷で一番小競り合いがよく起こっている場所を見たいのならやっぱり酒屋が一番だと思う。
今日もまた薬屋が酒屋に出動する。弾幕ごっこに敗れた怪我人を収容するためだ。
大半が手遅れであったりするのだが。
もちろん薬屋も手遅れすぎる場合は見捨てることもある。 この辺のドライさは流石月人である。
彼女が本気を出せばたぶん半生半死状態だって助けることはできるだろう。


さてなんで酒屋でそんなものが見られるのか
実は幻想郷では多くの場合酒屋が貸金業を営んで居るケースが多いのだ。
所謂銀行系の両替商とは違う。 所謂ヤミ金融みたいな存在である。
従ってトラブルも多いのだ。


貸金をやっているのは概ね天狗である。
というか天狗以外にこの仕事が勤まらないのである。
お金を返さない連中が弾幕戦を仕掛けることが多いからだ。
顕界の連中が貸金をやったときはものの数日で土左衛門になって側溝の上に浮いていた。


この日様子を見てみたら浅間が天狗相手に弾幕ごっこをやっていた。
弾幕ごっこに勝ったら酒代を無料にすると言われたらしい。
まさか闘いを挑んでくるとは天狗自身も思わなかったのだろう。


改めて思うのだがやはり浅間は顕界にいるべき人材じゃないのかもしれない。
圧倒的とまでは言わないがやはり人間離れした動きで、いや寧ろ酔拳のような
予測不能な動きで天狗たちを翻弄してしてしまうのである。
これには折しも天狗たちも驚きを隠せないようだった。


闘いは浅間の辛勝で済んだ もとい済ませたが
天狗が浅間を大いに気に入っていたのが印象的だった。
彼女なら万が一でも大丈夫だと意味深な言葉ものこして。


朝倉に今日の出来事を話したら
儚月抄プロジェクトすなわち月面に博麗の巫女を送ったときに
巫女が帰還しなかった場合に備えた動きがあったらしい。
自称現人神もリリーフ陣の一人と聞いているが
万が一を考えて保険も多い方がいいのだろう。


しかしながら浅間が博麗の巫女として活動する可能性はほとんどないらしい。
あるカミが許さないというのである。
それは浅間が極端に呑兵衛でいられることに関係するようだ。
今の博麗の巫女とて絶対安泰というわけではないようである。