□月 ●日  No949 放蕩妖怪のアルバイト


放蕩妖怪が薬屋から金を貰っている。 なにかアルバイトでもやっているのかと尋ねると
結構前から薬屋のやってる診療所のお手伝いをしていたらしい。


久しぶりに来た薬屋だが何故か様子がおかしい。
見れば姫様がアグレッシブに体を動かしているではないか。
一体何が起こったのか、薬屋は忙しそうなので放蕩妖怪に話を聞くことに。


一見万能な薬屋であるが、彼女であってもどうしようも出来ない病があるそうである。
それは、気から来る病。 病は気からと言う言葉があるが、現代科学も心身相関という言葉がある。
心の持ちようで病気はよくもなるし悪くもなるのである。


だが、心の持ちようと言うのは始末が悪い。
本人が何とかしようと思ってもどうにもできない場合が数多い。
無意識のうちに体が意図しない反応をするからだ。
たとえば心因性の痛みなどがそれに当る。 腰痛だと思って体を大切にしている内に
本当の腰痛を引き起こしてしまうと言う。


放蕩妖怪はこうした病を癒すことができるらしい。
自律神経失調にも効果が高いそうだ。
放蕩妖怪も今まで見たこともないような多額の謝礼を貰ってご満悦のようだ。
まさか自分が得た能力が世間の役に立つとは思ってなかったのだろう。


さて、ニートもといディレッタントなお姫様だが
体を無意識に動かしたくなるように手心を加えたところ。こうなったようだ。
いくら寿命が延びたとしても、死なないとしても肉体が弱って動けなくなれば
まるで精神の牢獄に閉じ込められたような手あいになってしまう。


結果的に姫様は随分体を動かすようになった。
最近体の調子が良いらしい。 
今までは薬屋の薬を利用していたが最近は薬も要らなくなって薬屋も少々寂しいらしい。


放蕩妖怪の話では無意識に痩せる技はないのかと薬屋に尋ねていたという。
自分で痩せる努力なしで痩せてもすぐに戻るよと言われてはっとしていたそうだ。
多分彼女のことだから薬で痩せようと思えば痩せられるのだろう。
だがそれは解決にはなっていないわけだ。


今なら治療費をまけてくれると言われたが丁重にお断りした。
できれば私以外の患者を治療するべきだと思う。
そんなことを話したくすくすと笑われてしまった。
どういう意味なのだろう。