□月 ●日  No948 幻想缶詰

ふと思うところがあったので香霖の店に様子を見に行く。
店内は相変らず雑然としており自分で使うもの以外はほこりが被っている。
香霖の様子を見たら何やら口に何か入れている。
一体何を食べているのかと思ったら、缶詰に入っている魚を食べているようだ。


幻想郷には海がない。 缶詰に入った魚は香霖にとって珍味である。
食べて大丈夫なのかと賞味期限表示を見たら、明らかに過ぎていた。
もっとも幻想郷の住民はそういうものなんて関係なく
食べられたら食べてしまうのである。


なぜ幻想郷に缶詰がやってくるのか?
実は顕界ではカンズメの居場所がなくなりつつある。
レトルト食品やフリーズドライの技術が進歩したため無理にカンズメを食べる
必要がなくなってきたのだ。


美味いから喰えと勧められたが丁重にお断りした。
食べて体を壊したら絶対意味がない。
体がよくなるまで幻想郷にとどまり続けるのはかなり勘弁だ。


缶詰をよく観察するといくつかは少し膨れている気がする。
どうみても腐っているとしか思えない。
心配になったのでそれを開封してみる。
道具がなくて缶を切るのはかなり骨だ。


開封したらしたで今度はきちんと食べろと言われてしまった。
幻想郷の発想を考えれば当然だが、結局強引に食べさせられる羽目になった。
味はそこまで酷くないがちょっと酸っぱいような気がした。


どうか食中毒になりませんように。