□月 ●日  No956 再教育


面倒なことになった。
比那名居の娘再教育のため月の都に遅ればというアイデアが通ってしまったのだ。
よく不良の更生に軍隊に入れることが多いのだが、理屈としてはそんな感じである。


列車に乗せるだけでも一苦労である。
同じ我儘といってもヴァンパイアの主人とは性質が違いすぎる。
ヴァンパイアの主人はある程度筋道を立てて話をすれば判ってくれるが
こいつの我儘は核が違う。 いや、端から人を小馬鹿にしているからちっとも聞いてくれないのだ。
彼女をよく知る竜宮の使いにその話をしたら、是非やってくださいと
手を握ッて懇願してきた。 一体何があったというのだ。


ともあれ、月の方には一応話をつけてある。
綿月妹が性根を叩き直すならお任せとと言ってくれた。
兎が多分無理と言っていたが、実は私もそう思っている。
それは見ていないところではサボっている兎をみればよくわかる。


会って早々始まったのはどつきあいだった。
両者とも酷いレイシストである。 
お互い自分が偉いと思っているだけに衝突するのは自明の理であるのだが
綿月妹がなんとか比那名居の娘を戦闘不能にする。


まるで獣の調教のような様相だと思いきや
綿月妹の評価は総じて良かった。 むしろ博麗の巫女と比較されてこっちが顔が赤くなった。
テーブルマナーや文化的な部分は月人と同等クラスと判断されたのだ。
育ちの良さというのはかなり重要な要素なのだと感じ入る次第。


なにより自分では敵わないと知ると、比那名居の娘の態度は豹変することもわかった。
そのことを綿月妹に話すると、あまり判ってないようだった。
やっぱり薬屋にアドバイスを貰えばよかった。


結局再教育はスムーズに終わった。 帰った比那名居の娘はあまり変わらなかった。
多分自分より強い奴の言うことは聞くといった按配なのだろう。
駄目だと思っていたが、明確に駄目とわかっただけでも大きな収穫として
諦めるしかないような気がする。


しかし一部妖怪には大分良くなった 生まれ変わったという話が良く出た。
どうやら指摘する相手によって態度を変えるみたいである。
比那名居の頭領に報告すると、やはり駄目かとだけ言われた。


この話を風見女史にすると今度は自分のところで面倒見ると言っていたが
また結構面倒な事になりそうなので頼んでいない。