□月 ●日  No970 境界型妖怪と一点物商品


久々に厳重に梱包された商品を運ぶことになる。
送付先のタグを見ると、差出人と宛名が全く同じ事に気がついた。
これは所謂境界型妖怪と呼ばれる妖怪の依頼である。


妖怪というのは幻想郷にだけいるとは限らないのはよく知られているのだが、
顕界と幻想郷両方に普通に出没する妖怪がいることはあまり知られていない。
強いて言うなら隙間妖怪がそうだが、妖怪の中には幻想入りをよしとせず
都合に合わせて行き来しているタイプが存在するのである。


こういうやつらからは注文は滅多にやってこない。
彼らは彼らで外の世界で物資を得ているからである。
しかし、彼らとて幻想郷に物資を運び入れるときはうちの会社に依頼することになる。
こうした場合、商品がきちんととどくよう手配すればいい。


しかしこれら商品は一般の取扱商品と違い、いわゆる一点ものだ。
通常、日用品の類を運ぶときは事故防止のため、同じ商品をいくつか余計に入れる。
梱包が壊れた場合の保険になるからだ。
もちろん破損時は保険制度があるので多少の弁償は可能である。
が、代わりの物がないため、何かあったときは損をうちの会社で被らないといけないのである。


これが一点物となると破損したときの替えがない分
輸送の難度は一気にあがる。
エアーパッキンのような袋を箱一杯に詰め込んだ中に商品を入れるなどの工夫がいるのだ。
 破損した場合のリスクも説明するのだが
今のところトラブルにならないのは不幸中の幸いである。


それにしても珍しく細長い箱だった。
一体何に使うのかはよくわからないがとりあえず運び終わるまでは神経を張り詰めないと
いけないだろう。 配送も結構面倒なのである。