なんとか月での仕事も慣れてきたので少しづつだが日記に認めてみる。
月人のレイシスト振りは毎度辟易するが物珍しさが先に行っているお陰でなんとか平静を保っていられる。
綿月姉妹邸をまじまじと見つめる。 まさに古風の建物である。
よく、ローハイミックスと呼ばれる最新技術と古風のデザインが共存するデザインもあるが
月面の建物はそんなものではない。 本当に古いデザインなのである。
しかし、驚くのはもっと別なことである。どれも新品同様で美しいのだ。
極彩色に染まった建造物の塗装面には剥がれもなく、まるでコンピューターグラフィックスの
中にいるような錯覚を感じた。
とはいえ、月面の建物は思いの外頑丈に出来ている。 実は建造物に基礎はなく
微妙ながら浮いている。 顕界でいうところの免震住宅という物だろう。
朝倉の言うとおり月では地上と同じくらいの頻度で地震がありそれなりに規模が大きいというのである。
これが月面に基地を作るのを阻んでいるらしい。
この日も少し揺れていたが、建物の中にいれば全く問題はない。
面白いというより発想の違いを感じるのはやはり、すきま風が結構するといったところか。
月人の衣服に仕掛けがあるようで奴さんは暑さ寒さを感じないようだが、
なんとなく気になるといえば気になる。
適当に住民に尋ねたら、完全密閉しているほうが変だといわれた。
この辺はきっと考え方の違いかも知れないが、無駄が多いというのが第一印象である。
建造物の劣化はないためその分の汚れはないものの、何故か掃除は手でやっていた。
彼らにとって掃除は必要だからと言うより楽しみの一つになるようだ。
沢山拭かないといけないわけでもないし、いざとなったら面妖な術で綺麗にすることだってできる。
ただ自分の満足のためだけに掃除をしているようである。
いずれにせよ、月面だからと言って全ての生活動作が必要なくなっているわけでもないようで
結局のところむしろ先祖返りしている印象すら受けるのが実態だと思う。
彼らの価値観はよくわからないが、一種懐古主義に似たような物なのかも知れない。
なぜなら彼らの衣服はどちらかと言えば幻想郷のそれに近く、我々から見てもそれほど特別な
姿をしているわけではないからだ。
ちなみに石だけでも持ち帰ろうかなと試みたが、門番に制止されてしまった。
石ころも駄目ですかと尋ねたら、お前のやりたいことはわからんと言われた、
確かにわからんだろうがそれ位の戯れも駄目なのかと思ってしまった。