□月 ●日  No977 仕事を紹介


親戚から会社を紹介してくれと言われる。 このところの就職難でどうにかコネ入社を狙いたい人が増えているのだろう。
どうせ採用するかどうかを決めるのは人事なのでとりあえず概要だけ教える。
教えていて表向きの業務だけ述べていると結構まともなところに見えてくるのだから不思議なものだ。


夜、本人から電話がくる。いきなり言われたことに面食らった。
うちの会社をいきなりブラック呼ばわりしたのだ。
愚かな話だ。 うちはブラックなんかじゃない 漆黒だ馬鹿者。


冗談はさておきブラック認定の理由を考えると宜なるかなと思う。
幻想郷での仕事は拘束時間がとても長いし、その割には給料が長いようにも見える。
しかし、実際のところは工場のように時間は決められているがずっと神経を張り詰める必要があるわけでもなく、
仕事の密度はかなりのムラがあると言わざるを得ない。
幻想郷の現地通貨も給料の一部として貰っているから、顕界の給与が少し減るのはむしろ当然だ。
顕界暮しの期間が短ければライフラインの基本料金しか払わないことになる。 結果的に可処分所得は結構ある。


つまるところ外部からの印象だけでブラックかブラックじゃないかを語るのは強引だと思うのである。
むしろ重要なことは会社内の雰囲気や人だと思われる。
なぜなら、会社を辞める大半の理由は人間関係によるものが多いからだ。
そう言う意味ではうちの会社ほどコミュニケーション能力が問われるところはない。
こちとら、同僚だけでなく色々癖のある妖怪たちを相手しないといけないからである。


話を戻す。
就職活動している本人の話を聞いたら、うちの会社のお客は綺麗なマダムが多いらしいと専らの噂だという話を聞いた。
どちらかというとマダムというよりは少女と言った方がいいと訂正したかったが、色々ややこしくなりそだからやめた。
だが、彼女たちは皆一癖も二癖もあるクレーマーばかりだと思われているようだ。
クレーマーとは失敬な表現だと思う。 むしろ駄目人間と表現していただきたい。


本当に実情を話したかったのだが、いきなりやる気を挫いたらいけないので精一杯言葉を選んだつもりだ。
書類を送るかどうかは本人に罹っている筈だ。
結局人事部にその辺のところを尋ねたら、親戚からの応募はないらしい。
はえり好みなんてしている場合ではないと思うのだが、北白河から「言葉を選びすぎて警戒されたのでは」と
言われてはっとした。 
まあ命の危険があるとか、客の外見がヤバイとかもっとぶっちゃければ良かったのであろうか。
色々思案したが結論はでなかった。