□月 ●日  No978 60yeas ago.


月に知的生命体が存在する。 これは我々人類にとって大きな糧になることは間違いない。
だが彼らが友好的ではない場合どうするのか? それが問題だ。
月人との遭遇は我々が考える宇宙人像を大きく刷新することとなった。


これまで我々は人間の姿をした宇宙人など人間の願望が生み出したものだと考えていた。
星々には様々な環境があり、当然それに合わされた肉体をしているのが当然のことなのだ。
だが実際には違った。 月の人類は我々と大きな差が無かったのである。


月に住む人類は女性の姿をしていた。 
そのまま地上で暮らせば美人として通るくらいの容姿である。
私に妻がいなければそのまま持って帰りたいと思うことすらある。
何故彼らが人類と同じような姿をしているのか。
実は地球発祥でこの地上を逃げ出した超文明人である可能性も捨て難い。
なら何故、不毛の大地である筈の月に根を下ろしたのか疑問が湧く。
ここよりも生命が住みやすい星は他にあるはずだろう。 


我々が最初に遭遇した月人はそれは小動物のような存在だった。
コミュニケーションを試みると逃げだし、追えば威嚇行為に出る。
彼らは我々が持つような銃火器を持ち発砲してくる。
敵対する存在かとも思われたが、こちらから何もしなければ決して何もしない。
恐らくとても臆病な性格なのだろう。


我々が持ち出した機材の類も残らず破壊されてしまった。
ただの観測用のものなのにである。 臆病にも程がある。
もっとも後で解体する予定の物だったから、壊して貰った方が実は有り難かった。
結局彼らがやったことと言えば、嫌がらせ行為程度のもので実質的な被害は殆ど無かった。
だが、我々が嫌な顔をすると彼らは大喜びしていた。 まるで何か勝負に勝ったような勢いだった。


満足なコミュニケーションもできないまま我々は調査だけを済ませて帰ることにした。
月の住民たちは我々を追い出したと思ったらしく、謎の踊りを踊っていたのが印象的だった。
追撃する様子もないことから、きっと戦争のセオリーすら分からないような平和な人種なのかも知れない。


願わくば彼らの生活を脅かさないで済むのならそうでありたいと思う。