□月 ●日  No983 末期的人類の愉しみ


「ジャンクフードが食べたい」
「はあ?」
以上が今日の遣り取りである。 驚くべき事にこの注文をしたのは綿月の姉の方である。
ジャンクフードというのはあのファーストフード店で売ってるアレである。
自称現人神の注文ではない。月人の注文である。 
これには、思わず耳を疑うしかなかった。


長い寿命を持つ月人であるが、気の長い趣味を持っていても何れは飽きがやってきてしまう。
そんな彼らが一番楽しみにしているのが食べることである。
月人の食への関心は計り知れない。 いや意地汚いと言うべきか。 
綿月妹は弾幕を食べてしまうし、姉に至っては桃を無節操に食べている。
食べ過ぎても、科学の発達した月の都では糖尿病などの心配をしなくていいのだろうから
タガが外れているのかもしれない。


ハンバーガーを持ってきても彼らがそのものずばりを食べるわけではなく
複製機とかいう機械に掛けて合成して貰うらしい。
これだと穢れがないというのである。 
ツッコミどころは満載だが、彼らが満足ならそれでいいのだろう。
持ってきたハンバーガーは自前で食べてくれと言われた。
廃棄するのも面倒なので、自称現人神に横流ししようかと考えている。


薬屋に聞いた話では、月人は胃下垂が多いのだそうだ。
つまり大食いであるということである。
そういえば、白玉楼のお嬢様がフードバトルで月人とスキンシップを図っていたという話を聞いた。
隙間妖怪がなぜ彼女を月に送ったのかなんとなくだが理解できた。
駄目すぎる。


とにかく綿月姉妹の注文といえば宇宙食外食チェーン店のメニューとかそういったものばかりである。
こんな重たい食べ物を酒のつまみで食べているのだからたまらない。
一日に地上の人の二倍はカロリーを取っていると思われる。
ここまで来ると羨ましいと思えないのは何故だろう。


月兎と月人の食生活について話をしたら興味深いことを聞いた。
なぜ月兎の弾幕は座薬の姿をしているのか、それは喰われないようにするためなのだそうだ。
話を聞いて軽い頭痛に見舞われたので今日はすぐに撤収した。


色々疑問は解けたが連中の文化を理解するのは当面先になりそうだ。