□月 ●日  No1006 アリが来たぞー


幻想郷の初夏、なんとかお茶の葉争奪戦を切り抜けた。
今年は悲惨だった。 所々で弾幕戦が繰り広げられて生きた心地がしなかった。
メリーやレンコが一緒だったが本人たちも何事かという表情だった。
ここのお茶は結構旨いからこっちだって必死になる。


昼間はかなり日差しが強くなって熱くなってきたが、夜になるとかなり寒い。
自称現人神のように普段から裸足と薄着で慣れているのと違って
新人二人の寒さ耐性の低さは如何ともしがたいものがある。
仕方ないといえば仕方ないかもしれない。 とりあえず自室の布団を大目に
頼んでおいた。 風邪を引いたら大変だ。


この時期、民家の扉を開けると大量の蟻がわっと飛び出して嫌になる。
今年は香霖堂で大量の蟻が出た。駆除すれば良いのだが、虫妖怪が香霖堂に入れなくなるので
いろいろ厳しいのである。 蟻の薬は忌避剤がセットで含有されており、そのまま無計画に
散布すると一番のお客様である水棲生物系たとえば河童とかが入れなくなってしまうのである。
だから一度、蟻が出たら駄目になった場所だけを補修しないといけない。
根本的な解決方法にはならないがそれが一番よい方法だろう。


幻想郷に居る蟻は困ったことに巣を作らないので、駄目になった部分をハンマーで叩いて判別する。
駄目な部分は手で壊して交換する。 下に潜る役は香霖とじゃんけんで決める。
自分の店だから自分でやって貰いたいものだ。 
一度式神にやらせてみたら酷い出来で閉口した。 人形遣いのアリスなら作業用人形を
床下に這わせることができるようだが、彼女から借りようとしたら汚れるから嫌と言われた。
当然か。


じゃんけんに負けたので下を這おうとしたら躰が引っかかった。
太ったのかと思って焦ったら、単に床が下がっているだけだった。
香霖に上の物をどかせと言うのだがなかなかどかしてくれない。
単に荷物が散乱しすぎてどかすのに手間取っているせいなのだろうが
それにしても遅い。
だんだん中が蒸し暑くなって汗がだらだら出ることになった。いい加減にしろ。
しかも床下にカマドウマが出現して地獄の様相になってきた。
こっちに飛んでくるな。


結局脱出するのに小一時間かかってしまった。
作業そのものは数分で終わったのに酷すぎる。 
脱出した頭にカマドウマが乗っていたせいでメリーとレンコから避けられるようになってしまった。
お前らも床下に潜って貰おうかと本気で思った。
まあ、カマドウマにびっくりしていたら虫妖怪とつきあえないが。