□月 ●日  No1032 輸送列車を取り巻く環境


岡崎が先日から続く列車の改良案会議から帰ってきた。
最近色々消耗が激しいらしく整備予算の確保に苦慮しているらしい。


たとえば妖怪に列車の備品が持ち去られるのは日常茶飯事である。
トイレットペーパーの類とか酷いケースだとリクライニングまで持って行くのだからたまらない。
常識が通用しないというのはよく言ったものだが、迷惑以外の何者でもない。


こういう迷惑妖怪は隙間や冴月の高速転送が有効なのだが、毎回毎回大物を動かすわけにもいかず
こちらとしても大変苦労している次第。
まだ自前で転送して見せた自称現人神とケロちゃん帽軍団のほうがマシというものだ。 あれはあれで迷惑だったが。


最近は無人で走る列車も出現しているそうで、私たちはただ寝ていればいいという状況になりつつある。
幻想郷の列車の自立運転も顕界の自立運転も式神を使う点ではあまり変わらない。
人が乗るのは幻想郷と顕界の切り替わり時にそれぞれの式神を切り替えることと緊急時用の運転の為と言って良い。


幻想郷に送る貨物の量もかなり増えている。
顕界暮らしに慣れすぎた妖怪が増えたためで、それなりの文明の利器がないと困るという妖怪が居て困る。
最近は可能な限り材料のみの輸入に頼り、幻想郷内で用意する方向でシフトしている。
特に引退した技術者を幻想郷に派遣する例が増えている。 彼らにしてみれば割のいい収入源となる上
年の功で幻想郷でも通用するケースが多く、河童達の信頼を集めているそうである。


最近の問題はやはり月関係であることは間違いない。
こいつらときたら、羽衣という便利な移動手段があるのにわざわざうちの列車を利用して困るのだ。
しかも旅行気分でキャーキャー騒ぎながら乗ってくるので大迷惑である。
寝台車は散らかりっぱなしだわ、枕の投げ合いで夜も煩いわでろくなことがない。


何故彼女たちが羽衣を使わないのか。
兎の一人?に尋ねたら羽衣の信頼性が思ったより高くないことが分かった。
宇宙ゴミに当って怪我したり酷い場合は宇宙の藻屑となるケースもあるのだという。
そもそも羽衣は下界に下るためのものであって、帰還することをあまり考えていないからだと思われる。
地上に降りれば穢れるのだから基本片道なのかもしれない。


列車にも羽衣の一部が利用されている。
これはすなわち宇宙ゴミに当るということも意味している。
空気が自動供給されるとはいえあちこち傷だらけの列車は岡崎を悩ませているようだ。
疲れた表情で岡崎が早退したが、皆深くは追求しないことにした。