□月 ●日  No1046 嫉妬妖怪にご相談あれ


明羅女史がなぜか嫉妬妖怪と話している。
彼女ともあろう人物が嫉妬妖怪と話をするなんて個人的に考えにくいのだが残念ながら事実だ。
話が終わって、明羅女史はその場を離れたが、肝心の嫉妬妖怪に見つかってしまった。


何故か盗み聞きしていたことは怒られなかった。
嫉妬妖怪は一応封じられた妖怪である。 もっとも実際の彼女は人間にも妖怪にもそれなりにフレンドリーだ。
私にもフレンドリーに接してきて少し驚いた。


なんでも明羅女史は嫉妬妖怪に何度も智恵を拝借しているらしい。
嫉妬妖怪に言わせれば明羅女史は他人の評価を気にする性格だという。
そして他人の評価こそが嫉妬を生み出す源泉だというのである。


私は嫉妬とはもっとネガティブなイメージで語られる物だと思っていたが
本来嫉妬妖怪が扱う嫉妬は、人間にとってプラスになる嫉妬、
他の人のようになりたいと思う嫉妬のことを言うそうだ。
それはジェラシー型嫉妬と呼ばれるらしい。
対して、人を引きずり落とすような嫉妬はエンピー型と言って区別されるのだそうだ。


そういえば彼女が封じられた理由は人間の進歩を加速して人間が妖怪を畏れなくなる原因をつくることだと言われる。
そもそも儚月抄プロジェクトの目的の一部がそうだった。 人間の生活に溶け込んだ月人が
文明を人間に伝播してしまっては、結局顕界で起ったことの繰り返しになる。
だからこそ予防線を張らないといけないのである。 
嫉妬妖怪の時は地下に封じて、薬屋には月の酒を飲ませたのだ。


結局、明羅女史は朝倉さんのような格好いいキャリアウーマンになりたいのでどうすればいいと
聞いていたようだった。
彼女が美人でもいまいち近寄りがたい理由が何となく理解できた。
嫉妬妖怪が隙がない女性は余計に男性が寄りつかなくなるだけだと言って
苦笑していた。