□月 ●日  No1045 幻想郷の迷子石


幻想郷の珍現象。 幻想郷にあるとある岩が割れて中から綺麗な石がゴロゴロと出現したらしい。
霧雨のご息女や河童たちが群がって岩を少しづつ砕いては、その綺麗な石ころに魅了されている。
暫く、この綺麗な石ころの魅力に酔いしれた後ひとつの疑問が残った。
一体誰がこの石ころを用意したのだろうということだ。


あちこちに聞いて回ったのだろう。
私がこの話を聞いたのは上白沢だった。 上白沢は誰か力持ちの妖怪が戯れに岩を飛ばしたに違いないと
言っていた。 力持ちの筆頭と言えば鬼だが、鬼娘はその話を否定した。怪我人が出たらどうするんだと
逆に聞かれてしまった。正論とはいえそれを言われると言葉にならない。


香霖は綺麗な石ころを鑑定していた。 出てきたのは所謂鉱物資源。
どうやってこの岩がやってきたのかは分からずじまいである。
うちの会社の輸送部隊のミスで鉱物資源がこちらに送られてきたに違いないと言っていた。
里香女史にそのことを尋ねると、そんなことをしたら一大スキャンダルだと言われた。


ノーレッジ女史は隕石を落とす魔法のせいに違いないと言っていた。
だが、そうなると表面は少なくても炭化していないといけない。
その岩は傍から見たらただの岩だった。 
ちょっとそれも信じがたい。


阿礼乙女に話を聞いていたところ、横で聞いていた氷妖精から心当たりがあると言われた。
物事の本質を突くのが得意な氷妖精。 試しにその話を聞くと、その岩は「迷子石」という。
そして驚くことを言った。 この岩を運んだのは他でもないレティホワイトロックだと言うのである。
そのときは幾ら彼女がぽっちゃり系とはいえそれは言い過ぎだと思ったのだが、帰社して調べると
どうもその通りだと分かってきた。


たしかに顕界でも、周辺地盤と全く違う岩がぽつんと置いてあるケースがある。
米帝のとある公園に似たようなものがあるという。 それも迷子石であるという。
迷子石は誰が運んでいるのだろうか。 それは「氷河」だというのである。
つまり、この岩が置いてあるところはかつて、氷河に覆われていた土地だというわけだ。


氷妖精がいうレティの仕業というのはそういうことだったのだ。
山の中腹で崩落した岩が氷河を通じて少しづつ下りてきた。
時を経て長い時間を掛けてこの岩はこの場所へと辿り付いたのだ。
妖怪の力の源泉と言われる自然現象が織りなす珍現象というわけだ。


かつてレティホワイトロックは幻想郷に強く君臨した時代があったという。
彼女の威光はこうして迷子石の形で残されている。