□月 ●日  No1079 朝倉理香子の手記


霧雨魔理沙が使用していたという著書が顕界で販売されるそうだ。
まったく幻想郷の商品がこの世で売られるばかりか人気を博するなんて世も末のような
気がしてならない。


内容を読ませて貰うと、自己相似形を意味する「フラクタル」という言葉が
目についた。 私はその部分を読んでスペルカードシステムにおける
自分のやってきたことは間違いではなかったことを確信した。


フラクタルすなわちフラクタル幾何学とは本来、自然の形を数式化して現わす為に
必要な学問だ。 自然の形を模した弾幕を生成する際に必要なものだ。
あるとき波や雲、地形や植物の枝 本来ならアトランダムな不定形の形を
電脳上で作るときひとつの基本的な図形を組み合わせるだけでそれが出来てしまう
ことを発見した者がいた。


しかしこのフラクタル幾何学は幻想郷では存在し得ないものである。
この学問は大量の計算ができる電脳と呼ばれる式神があって初めて可能となるものだ。
計算式そのものは月から輸入された魔術システムからも読み取ることは出来たし
顕界でも前世紀には一応数式が見いだされていた。
しかし大量の計算が必要とされる点については今まで気が回らなかったのである。


私が科学に興味を抱いた直接の原因があるとすれば、まさにフラクタル幾何学の存在で
あるところが大きいと思う。
顕界の科学で自然を現わす数式が存在するとは思ってもいなかったのだ。
そしてフラクタル幾何学を応用することに必要な基礎システムを走らせるのに
スペルカードというシステムがとても有効だったのである。
所謂使役型(霧雨式では奴隷型)と言われるスペルカードがあるがあれの応用と
思っていただければよい。


顕界の技術であるフラクタル幾何学
それが霧雨魔理沙の魔導書にさらりと載っている。
これこそ私が目指した科学と魔術の融合の結果であると確信する。
私のやってきたことは間違いなかったのだ。


というわけでチーフに本を一ダースほど買ってきて貰った。
3冊は観賞用、2冊は幻想郷に送りつけて、5冊は保管用、1冊は彼に読ませて
1冊は自分で読む予定。