□月 ●日  No1141 ウラシマ感覚


大師様に現代の情勢を説明しているのだがえらく難航している。
彼女と話すのは完全に宇宙人と会話しているようなものだ。
ありとあらゆる知識が1000年前で止まっている。 
今まで外の情勢を説明してきたが、ここまでギャップが激しいと正直きついものがある。
大師様にとっては今の幻想郷ですら科学が発達した世界に映るのだ。


食べ物ひとつとっても、それが何なのかを説明しないといけない。
なにしろ長く切った蕎麦すら知らないのだ。 盛り蕎麦を出したらつゆにつけずにそのまま
食べたときはびっくりしてしまった。
自称現人神の方がまだ幾ばくかマシである。
彼女の場合は歴史などの授業である程度幻想郷の風俗に対する理解がある状態から
始まった。だから不便な生活になったときも心的な動揺は少なかったと言える。


問題はうちの会社で提供している食べ物類をお布施と思っている節があるということだ。
もちろん徐々に縮小していくのだが、信仰が目的ではないと分かると、自分が目当てかと言われた時は
正直閉口してしまった。 船長から今のお坊さんは売色しないのかと尋ねられて、
幻想郷の遊郭といった公娼システムを説明する羽目になった。


船長の話では大師様自身はなにも食べなくても問題は無かったらしいが
食い詰めた妖怪のために身を投じることは頻繁にやっていたらしい。
まるで教祖を崇める信者のような口ぶりなので話半分で聞いているが
朝倉から比丘尼の話を聞く限りではおおよそ間違っていないようである。
それだけ生きる事に血眼にならないといけない時代だったと言える。


船長が食べるのに不自由しないのは凄いと言って驚いている。
そのタネを説明する日はいつ来るのか、まずは幻想郷の生活に慣れて貰うことが
先決というのが実情である。 
ああ、面倒臭い。