各地で大晦日の準備に追われる。
力仕事のために鬼たちを動員し、方々に散らせて作業させる。
幻想郷の元旦は本当に社会インフラの大半が止まってしまうので
タイムリミットとの戦いとなるのである。
もっとも、数年幻想郷と付き合ってきた自分たちにとってある程度の
段取りは付いているからそれほど大変とは感じない。
今年取引先に月の都が追加されて仕事がいよいよ忙しくなるかと
体制を作っていたのだが、全くと言って意味がなかった。
理由は単純、月の都はそもそも太陽暦ではなく妖怪太陰暦を採用していたからである。
月の都だけに月齢を基準にして考えるあたり彼ららしいと考えるしかない。
むしろ通常営業シフトとしての対応を要求されてしまい
こちらとして色々と面倒なことになっている。
ここで妖怪太陰暦についておさらいすると我々の暦で60年に一回更新される
長い寿命の妖怪達にとって都合のいい暦である。
閏年問題の解決のため、月は12分割ではなく13分割となっている。
そもそもこの妖怪太陰暦はどこが使っていたのか?
それは長い寿命を手に入れた月の住人ではないかと思うのである。
月の都からすれば、新年の祝い行事などあまりに頻繁に行いすぎだと
思われている。それだけ基本のんびりしているのである。
極端に間延びした文明と言えるかもしれない。
恐らく一生の感覚は外の世界の一般人類とほとんど変わらないのでは
なかろうか。
これは妖怪にも言えることであるのだが、常に刺激を
求めているヴァンパイアの主人もいるのでとても興味深い。
ちなみに月の都で納期一日ずれはあちらでは数時間ずれと解釈されるので
遅れますと綿月姉妹に連絡したら、「こんな些細なことで連絡するな」と
言われてしまった。
帰りがけ綿月姉妹の厚意で色々なご馳走を貰って帰ってきたが
外見こそおせち料理だがなんとも言えない味がしてコメントに窮した。
冴月が「過去の食材のデッドコピーだから」と言う。
とてもじゃないが、月の都は暮らしにくいと思わざるを得ない。