□月 ●日  No1244 賽の河原の異変?


久方ぶりに三途の河付近でお届け物をしていたのだが、賽の河原で妙な事が起こっている。
一応、ここでは親の供養のためと言うことで親より先に亡くなった子供が石塔を作っては鬼や死神に
破壊されるという光景が見て取れる。
ただしこれには各種条件がある。生への未練を速攻捨てている子供には適用されない。
生まれた瞬間に口減らしされた子供はすぐに三途の河を渡ってしまい、責め苦を受けることはないようだ。


一説では、子供は生きるための気力が旺盛で、賽の河原で気力を削がないと生き霊みたいな存在になって
悪さをしてしまうからだと言われている。
生きがいい仏がいてもそれはそれで困るのである。
今まで私は石塔を壊されながらも健気に石塔を詰み続ける子供の姿のイメージしかなかったし
実際そういう場面にも出くわして切なくなったこともある。
しかし近年あの世に関する情報が出回っているのか今まででは考えられない事態が起こっているのだ。


この日、賽の河原で石塔を壊す小町嬢を発見。
子供は泣きながらもまた石塔を積み上げるかと思いきや、いきなり胸を触るなどのセクハラを始めた。
顔を赤らめながら振り払う小町嬢。 
「どうせ減るものじゃなし」というクソガキ。
見ていられなくなって、止めに入ったら「こっちは美人の死神がやってくるのを待っていたからオッサンには
用が無い」と言うではないか。
思わず、鉄拳制裁してしまった。 自分死神じゃないのに。


小町嬢から何故か礼を言われた。
最近このような子供が増えたらしい。 
親の無関心のせいなのかネットであの世の情報を入手している子供が急増。
石塔を壊す死神によりによって「チェンジ」とかいう子供もいるらしい。
子供の家庭環境を垣間見るような感じで切なくなる。


一部の死神は心が折れて、石塔完成を許してしまうケースすらあるのだという。
また、石塔の作りが頑丈になっており、崩そうにも簡単に崩れないケースもあるらしい。
時間は無限にあるのをいいことに大きな土台を作られて破壊困難にされることもあるそうだ。


会社に戻ってその話をしたら、たまたま居合わせていた閻魔様こと姫ちゃんが
問題を把握しており、現在対策を練っているという。
一度重機で石塔を破壊しようとしたこともあったそうだが、子供が喜んでしまって
まったくの逆効果だったこともあるようだ。
あの世情報をばらまいているネット情報源も探っているが、子供の情報網は
高度に分散しており、一カ所を叩いても効果が薄いこともわかってきた。


最近はこうした情報をばらまかないようにと、心霊番組を自粛するなど
報道規制も行っているのだという。 あの世に関する情報が広まりすぎるのも考え物だ。
そこに含まれている道義すら幻想入りされては世話がないと思う日であった。