崖の上で蹲っている人を発見。どうやら自殺しようと考えているらしい。
周囲の人も異常に気づいたのか「生きていればいいことがある」とか言っている。
言いたいことは分かるが、誰が見ても本人を追い詰めているようにしか見えない。
仕方がないので身の上話をしてみることにした。
仕事で死後の世界に行っていると言ったら周囲が引いた。事実なのだから仕方ないが
相手の興味は引くことができた。
死後の世界になれば、相手の問題は解決するのか?
実際のところ解決しないと思われる。死後の世界のルールも顕界とあまり変わらない。
結局周囲の人に心を開かないと、あの世でも孤独に苛まれる。
こうなったらたとえ地獄にいようとも冥界にいようとも似たような状況である。
ここで分かるのは友人親戚関係のネットワークや共同体の破綻で孤独感を感じている
ということだ。 そうやって自殺している人が多いのは事実なわけで
中有の道とかで仕事をしていればそんな人はごろごろしている。
相互依存できずに疎まれるのはどんな人間にもきついと言える。
こういう人間は閻魔様の裁きもあまり有効ではない。
全てにおいて諦めている人間が反省するわけがない。
反省を促すための裁きもこういう人間には機能不全に陥る。
というわけで、死んでも問題は何も解決できない。
冥界では食い物や最小限の生活には困らないというがそれは嘘だ。
腹が減っていれば腹が減ったままなのが冥界だ。 とっくに死んでいるから
死にはしないってだけだ。
むしろ、生活保護を受けていた方がはるかに文化的な生活ができる。
白玉楼に住んでいるヤバい連中の話もしようと思ったが、周囲の目が
私をどこかの団体を見るような感じで困った。
それでも冥界で起こっていることをありのまま言ったら
とりあえず自殺するのはやめたと言ってくれた。
周りから宗教の関係者かと尋ねられたが、一介のサラリーマンですと
答えるしかなかった。
どうせ死んだら事実だってわかるから別に問題はあるまい。