□月 ●日  No1267 青田買い


青田買いのためということで某学校を訪れる。
妖怪と親和性が高い人などを先に確保するためだそうで
確かに、妖怪と親和性が高くないと駄目というか妖怪に対しても
動じない図太い神経の持ち主が必要とも思えてくる。


うちの会社にはスカウト制度ってのがあるらしいことは前から知っていた。
メリーやレンコはスカウト枠での入社らしい。 
二人は当時、就職難でどこも内定が取れなかったという。
朝倉が車の中で「裏で手を回したのよ」と微笑みながら言っていた。
ふたりがいないとはいえ何とも言えない空気が車内を覆った。


さて、今日行ったところは教室ではない。
学校の裏手にある家畜舎である。 そこにいる人が対象なのかと思ったら
全然違っていた。スカウト対象はなんと子豚だった。
もはやホモサピエンスですらない。 なんともラブリーである。


朝倉はこの前はゴリラをスカウトしたと言っていたが冗談には聞こえてこなかった。
「こ、このかわいい豚さんがスカウト対象ですか?」と尋ねたら
無言でYESと言われた。 いよいよコメントしがたくなる。
そこに何とも信じがたい声が声が聞こえてきた。
「おっさん、俺のことを可愛い豚さんと言うのは取りあえずやめにしてもらえないか」
おおよそそんなことを口にしたのである。豚が。


朝倉の話では妖怪になりかけの豚だそうだ。
彼?を当社で買い取って幻想郷送りにすれば立派な豚妖怪が生まれるという。
人間の代わりに豚を妖怪に喰わせている事実をどう考えるのか本気で問い詰めたい。


戸惑いながらも説得しようと試みたら
「俺はこの学校が好きなんだ。」と言われた。
なんともナイスミドルな良い声だったのは印象に残っている。
声優業でもやったら人気がでるかもしれないと思える。


結局今日のところは諦めたが、人間じゃないものをスカウトするのはどうかと思う。
すると朝倉は、射命丸だってカラスじゃないかとツッコミを入れてきた。
色々ため息が止まらない日だった。