□月 ●日  No1310 命蓮寺もたいへんです


うちの社員への勧誘が目立つので命蓮寺のムラサ船長に苦情を言いに行く。
もっとも勧誘されて入信するような人はなく、まるで雲を掴むような勧誘活動で相手も相当
苛立つらしい。 無理もない。


そもそも命蓮寺が幻想郷にある時点ですでにハンデを背負っているといえるだろう。
彼らにとって現世は所謂修行の場であり、死後に極楽浄土へと旅立つためにあると言える。
すなわち今苦しいが死んだ後に救われるのだから今を我慢しましょうという教えである。


ところが幻想郷は始末が悪いことに死後の世界と現世が殆ど地続きで存在している。
普通の宗教家ならそんなところを紹介されたらたまらないだろう。
悪いことをしたら地獄の閻魔様に裁きを受けるという教えがあるとしても、
私は肝心の閻魔様と顔見知りである。 こんな状態では教えがまともに伝わるわけがない。
命蓮寺は最初から外堀を埋められた状態で幻想郷に投げ出された感じである。


朝倉も指摘していたが、隙間妖怪がわざわざ冥界との境界を完全に補修しなかったのは
命蓮寺復活に向けた布石だったと思われる。本人は当初面白いからと言っていたが
本来なら合理的な理由無くそういう無茶なことをすることはない。


直前に冥界との境界を曖昧にしなかったのは、幻想郷の感覚的にソフトランディングを
果たすためだと思われる。
だからこそ大師様が復活しても幻想郷に影響がないと言えるのではないだろうか。


寅さんは幻想郷は即物的な御利益を極端に求めると言っていた。
なにせ幻想郷は願いを叶える主体が同列に存在しているのである。
大師様が戻ってきて少しは生活が楽になるかと思ったが当てが外れたといったところか。


さて、今回の勧誘騒ぎだがうちの会社の人は誰一人として勧誘に応じないと言われた。
当然と言えば当然だろう。
船長は自分の修行が足りないと自己完結していたが、現実はなかなか厳しいと思われる。