□月 ●日  No1335 古明地さとり


地下深くにあると言われる地霊殿と呼ばれる建物。
甘粕は、この建物に身を寄せる事に決めた。
何故か?そこには心を読むことが出来る妖怪が存在すると言われる。
天狗などの諜報組織がここを調べることがあればここにいる心を読み妖怪が
黙ってはいない。 だからこそ身を隠すのにこの地霊殿はうってつけの場所であったと言える。


「心が読まれているだろうから単刀直入に聞く、聖白蓮の様子はどうだ?」
「精神遮蔽が強くて、相手の意図が読みづらいですが焦っていることだけはわかります。」


甘粕の問いに地霊殿の主人「古明地さとり」は答えた。
彼女は心を読む妖怪として地下に住んでいるとされる。 
彼女は心が読めることから地上で疎まれ、地下に暮らすことになったと言われる。
本来なら、天界に住んだ方が精神遮蔽の問題を解決するのには都合が良いはずである。


そんな古明地さとりには別の任務がある。
それは地下に封じられている妖怪たちの監視活動であった。
相手よりも早く意図を掴むことでリスクをたちどころに収拾して見せたのである。


「娘の様子はどうだ?」


さとりに尋ねたのは、義眼を持つ妙齢の男だった。


「彼女は無事よ。 ただ」
「ただ?」
勿体ぶったさとりの言葉に甘粕は少々苛々した口調で尋ねる。

「法界は、魔力に満ちた場所なのよ。聖白蓮はそこで修行することで強大な魔力を手に入れた。
 結論から言えば、彼女を五体満足で救出できると考えない方がいいわね。」


「娘が生きていればそれでよい。」
妙齢の男はきっぱりと断言した。
その語気は心が読める筈のさとりすらしばらく沈黙させるものだった。


「だが問題は、彼女を解放する手段がまだないってことだ。あれが戻ってこないことには。」
甘粕は暗く閉ざされた天に目を配った。
彼女の救出にはある物を手に入れる必要があるからだ。 

 


十六夜咲夜はロケットの外の物音で目が覚めた。
彼女の能力である時間軸の制御を発動し、時間を止めながら外の様子を見渡す。
そこには、何かにぶつかって墜落する鳥の姿があった。
何かにぶつかる、最初咲夜はロケットにぶつかった音だと推理したが
鳥が落ちている場所の不自然さが頭から離れない。


咲夜は鳥がぶつかったと思われる虚空に向かってナイフを投げつけ
ほんの少しだけ、時間を回してみた。
鳴り響く金属の鈍い音。


「なるほどね」


咲夜はその様子を満足そうに見ると、またロケットの中へと戻っていった。