□月 ●日  No1341 射検場のひみつ


会社の中が慌ただしいと思ったら、射検場で火災があったとかで
待機していた消防が出動していたらしい。
滅多にないトラブルである。


スペルカードの開発は常に危険と隣り合わせである。
勿論、そんな危険を回避すべく様々な技術的工夫が成されておりトラブルを最小限に
押さえるようになっている。
しかしながら最後はどうしても実地テストをしないとならないわけで、うちの会社には
スペルカードの射検場があるというのは以前説明した通りだ。
ここではスペルカードを直接実行するだけでなく、シミュレーション通りに弾幕が発射されるか
射程距離は制限されているかなど色々な観点から弾幕を検証することになる。


ここで重要なことは事故なく試験をすることだ。
もちろん今日みたいに事故が全く起きないわけではない。
射検場の解放日前には、消防や警備などで綿密な打ち合わせがある。
火災時の消火手順や、通報なども一括で行える体制となっている。
そして、射検の日ではきちんと周囲にポンプ車や化学消防車、消火剤を撒くためのヘリまで
待機している。


この日の火災も大した被害を出すことはなかったが、当初予定を超えた規模の
弾幕が発生してしまったということで、チームが編成されたようだった。
最近の弾幕は物理的に何かを飛ばす技術が発達したせいで思わぬ大きな爆発が起こるケースが
あるようである。 
もちろん、被害が拡大しないように、結界などを用いて対処はしているようだ。


弾幕ごっこはあくまで「ごっこ」でなくてはいけないと朝倉は言う。
技術的には相手を確実に殺傷することが目的の弾幕くらいいつでも作ることができる。
かつての妖怪は人間を容赦なく殺傷していた。
今の妖怪も一部ではそういう者がいるもののごく少数となってしまった。
それは人間の報復が妖怪の想像を遙かに超えるものになったからだという。
妖怪としても一時の快楽のために人間を殺すことで自らも危機に晒される気はないと
いうわけだ。当たり前といえば当たり前のことである。


安全を確保しつつ危険な遊びをする。
この相反する二つの命題を満たすために試行錯誤が日々繰り返されている。


ちなみに今日の事故原因は小麦に関係するカードと言うことで小麦粉をばらまくカードを作ったが
粒子が予定より細かくなったため小規模ながら粉塵爆発が発生したのだという。
正直、粉塵爆発の方が遙かに効果は高いのだろうが、それをしないのが幻想郷流である。