□月 ●日  No1354 与えるな危険


ノーレッジ女史から、命蓮寺の連中が顕界の思想書を借りていくという話を聞く。
辞書まで借りていく念の入れようだ。
借りている書籍は人心掌握術から経済学や社会学の本など。 
あまりに内容が偏っているためこちらに話が振られてきたらしい。
これはかなり危険な兆候ということで早速会議に掛けられる。


曰くカルトは社会不安に乗じて自分の考えを広めるのだそうだが
今も昔も幻想郷生活は色々大変で、細かな不幸にいちいち気をとられている場合ではない。
たとえば救急医療。 幻想郷なら助からないのが基本である。
そもそも倒れたときに救急医療に頼る知識がないのだから仕方ない。


未熟児が生まれたら意地でも助けるのが外の世界。
生きられないなら殺したほうがよいと考えるのが幻想郷流。
河童のようにそういう子供に対して強くこだわりを見せる種族も居るがおおむねそんな感じ。


畸形がいたら見世物小屋につれられる。信じられないけど妖怪にすら奇異の目で見られる。
それがおかしいと思うのは顕界の発想。 残念ながら差別感情もセットで幻想入りしているのが
今の幻想郷。


こういうものをいちいち見せられると色々とあきらめの感情も沸いてくるってもので
できることとできないことの境界の中で色々悩むのが幻想郷にかかわる顕界の人間たち。
大変だけどどこまで許容するか妥協するかは人それぞれだったりする。


こういう状況にもかかわらず納得しないで空気を読まずに何とかしようとしている奴がいる訳で
ずばり命蓮寺の連中なのだが、組織化されているため今まで以上に扱いが難しい。
炊き出し行為をしながら信徒を増やしているようなので、こちらとしても頭が痛い問題と
なっている。
そこに顕界の思想書などが加わるといよいよ手がつけられない問題になりそうである。


とりあえず本を貸すのをとめられないかという話も出たが逆に不審に思われて
カルトにありがちな迫害状況に陥る危険性があるという。
煮詰まった議論の中、出た結論がこちら。
思想を相対化する書籍もセットで貸す方針に決定。


思想の失敗の歴史もセットでみせることで相手は巧妙になるだろうが
少なくてもアホなことはしなくなるという期待をこめた手段である。
結局窓口はこちらになる事実に不安を感じる。 私に死ねというのだろうか。