□月 ●日  No1383 空を飛ぶと言うこと


エレンからそろそろ空を飛ばないのかと聞かれる。
一応は疑似スペルカードで空を飛ぶことは不可能ではないらしいのだが
うちの社員もほとんどはそれを利用することはない。
空を飛ぶにはセンスと万が一に自分を制動できる力が必要である。


空を飛ぶトレーニングはまず、バンジージャンプ宜しく
背中に紐を付けて、緊急制動の訓練から始める。
武道で受け身の練習をするようなものだ。
この緊急制動が上手くいかないのならそもそも空を飛ぶセンスがないということになる。


それにしても幻想郷の妖怪が何故空を飛ぶのか。一部人間すら空を飛ぶのは何故か?
皆が疑問に思うことだろう。
空を飛ぶというのは実に不安定で必要以上にエネルギーを消耗する。
姿勢を調節するための羽があればエネルギーを節約できるが、
それ以外の方法ではいかんせん効率が悪い。


人間一人を運ぶ場合でも顕界ではロケットベルトというものが
登場したものの、それが移動手段として活用されることはなかった。
ヘリコプターは便利な乗り物だが、燃料喰いで知られている。
だが、そんな手段でありながら幻想郷では無駄を承知で空を飛ばないとならないのは
何故であろうか。


なんのことはない。幻想郷は運河が極端に少ないため効率の良い移動手段が
空中飛行だったに過ぎないからである。
元々山間の土地である幻想郷は空を飛ばないと長距離移動が困難なのだ。
そうでなければ、わざわざ危険な飛行を行うのはナンセンスなのだ。
そして幻想の世界では化石燃料より効率的な魔力というエネルギーが存在している。
故に、本来効率が悪いはずの空中浮遊が幻想郷では一部の者の移動手段とはいえ
存在しているのである。


ちなみにだが、博麗大結界の構築には信頼性の高い物資の流通インフラが必要だった。
その問題を解決したのは陸蒸気の存在だったのである。
幻想の世界を守るのに文明の利器を使うとは何とも不思議な感覚だが
文明が幻想を破るというのは意外と違うのだということが理解できれば幸いである。