□月 ●日  No1386 転職してもいいのよ


香霖堂に顔を出していたら、いきなり香霖に袖口を引っ張られて裏に連れ込まれた。
香霖が指さす方向を見ると、ネット転載天狗が売り物の筈の顕界のパソコンを
軽快に操作していた。
これには香霖もびっくりして、しばし彼女の動きを観察するしかなかったようだ。


彼女は単にネットで調べた情報を元に操作しただけなのだろう。
それでも調べる方法が判っている事実は私も衝撃が走った。
記録されていた画像については諦めていただきたいと思う。


外に出始めたネット転載天狗の評判を最近よく耳にする。
ほぼ共通した意見が、とてもまともな天狗だと言うこと。
まるで他の天狗が禄でもないと言わんばかりだが、それについてはノーコメント。


危険度評価も妖精以下というとても珍しい数値をたたき出している。
ネット情報に埋もれていたせいか顕界の常識が通用するのは有り難い。
そして何より、鴉天狗の上澄みを真似しているお陰で普段からとても礼儀正しい。


うちの会社の妖怪評価はまずコミュニケーションが取れるかにつきる。
コミュニケーションが取れれば最悪の事態になっても復帰もしやすい。
またコミュニケーションできるということは相手の意図も分かりやすいということだ。


よく月人達の評価はどうなのだと聞かれるが、彼らは何だかんだ言って
コミュニケーションが取れるので大丈夫だと思っている。
レイシストであると言われるけど、自分の中にあるレイシズムの存在を認識しないと
駄目だと思う。


さて、ネット転載天狗は顕界の情勢にも詳しい。
我々が知らないことでも結構調べているからうちの会社の女の子とも話を合わせられる。
逆に幻想郷住民からは感覚が違うと言われることが多々あるようだ。
折しも今回の出来事は彼女がパソコンを使うことができるという事実を証明したものだった。


ネット転載天狗おそるべし。