「怪力乱神」の鬼娘と久しぶりに会話することになった。
がさつであるが相変わらず奇麗な人である。
復元された博麗神社を気にしていたので特に問題ない旨を話したが、鬼の構造力学に関する知識は
現代建築に通じるレベルに達しており、以前よりも寧ろ構造上強靱になったと技術部の人間が
舌を巻いていたことを話すと、当然とばかりに鼻をならしていた。
とにかく鬼の構造力学分析は半端ではない。今回の修復劇も博麗神社どう組み上がっているのか把握していた
もう一人の鬼娘の能力があってこそのものであった。
彼女が、それだけの構造分析能力を持っているのは、やはり鬼たちがもともと豪雪地域に
住んでいたことが影響していたようだ。
雪の重量に耐えうる建造物を造らないと、家がつぶれてしまうのである。
さすがの鬼たちも雪の中に長時間生き埋めになってしまったら無事では済まない。
彼女たちの構造力学は生き抜くために必要な知識なのである。
それにしても、彼女たちの色彩センスはとても独特である。
赤鬼、青鬼もそうだが、必要以上に極彩色を使ってみたり、お世辞にも色彩センスは良いものではない。
その証拠が博麗神社の色彩に隠されている。
今回の話で判ったのだが博麗神社の復元は今回だけの出来事ではないらしく、過去にも
自然災害で一度破壊されたことがあったらしい。
そのとき本来なら極彩色に塗られている筈の神社が地味な色合いになってしまったという。
鬼が色彩までは復元できなかったのだ。 そのため神社は幻想の世界にもかかわらず
地味な色合いであると博麗の巫女自身もそう思っているという。
確かに、「怪力乱神」の鬼娘にしても色彩センスは最悪だ。
角を見ればはっきりしている。真っ赤に塗られた角と真っ白な衣服、肌が白いのと相まって妙な印象である。
そういえば、レティ・ホワイトロックがロシア系妖怪の色彩センスがあまりよろしくないと聞いたことがある。
普段雪景色で色彩に乏しい世界で生きていたため、色に関するセンスが醸成されないからだという。
その証拠に、温帯で暮らすようになったもう一人の鬼娘の色彩センスは大分マシになっているようである。
さて、顕界の鬼がどうなっているのかと尋ねてきたので、イケメンヒーローとコラボを果たして
有名になった鬼の話をしたら、もう知ってると言われて少々驚いた。
あれは、誰々がモデルだとか色々言われたが、一つ言えるのは鬼たちもイケメンが大好きだという事実であった。
思わず笑みが漏れてしまった。