□月 ●日  No1484 頭に付いているあれ


うちの会社の魔法を扱う部署から変な連絡。 私が納品するはずの髪飾りに
エンチャント加工がなされてなくリコールが掛かっているとのこと。
指定された品物を調べたら結構奥に入っている代物で少々鬱になる。


エンチャント加工とは魔法によって幻想郷に住んでいる少女達の衣服の強度を上げたり、
後で魔法を賭けられるように魔力を滞留させるための加工を施したものである。
一般的に頭に付ける帽子やアクセサリーに用いられる。


幻想郷の人妖の大半が帽子やアクセサリーを付けているのには理由がある。
幻想郷で空を飛ぶ少女達。彼女たちの飛行速度はかなり速い。
そのため、事故になると結構大きな問題になる。


怖いのは何かしらの理由で低空飛行しているときに歩行者とぶつかることだ。
少女達の移動速度は最低でも時速30キロ。 これは原動機付きバイクと同等の速度と言われる。
彼らが移動するときにヘルメットを着用するするように本来なら頭部を守るように何か必要となるだろう。
また乗り物に乗っているのと違い、基本的に衝突すると頭からぶつかることになる。
事故になれば無事では済まないことが多い。


身代わり呪符も自前で発動させる必要があることから偶発的衝突の場合はとても危険なことになる、
そこで帽子にエンチャント加工を施す必要があるのだ。
顕界におけるヘルメット。 それがエンチャント加工されたアクセサリーの役目だ。
最低限頭部を守るための防御魔法が施されている。


移動をやめてなんとか帽子を取り出す。私がとって返すと時間が掛かりすぎるので、
会社に連絡を取って、周辺を巡回する天狗に渡して作業は完了だ。
自分の居場所を追跡するためのビーコン番号を指定しておけば、それを追いかけて天狗たちは
処理が終わった帽子を届けてくれる。


結局エンチャント処理には時間が掛かるので、あちらであらかじめ用意した処理済み帽子と交換で
対応することになった。 このような注文品はいざというときのために二つ以上作るのが通例だ。
ちょっとしたことであるが、うちの会社の注文品はこのようにして処理される。
備忘録としてここに記しておく。