毎年このような光景に出会っているというのか。
月の都ではこの時期兎たちが餅をつくことになっている。
永遠亭での光景も大概だが、ここ月の都はもっと酷い。
あまりの酷さに月兎をひとり張り倒してしまった。なぜか綿月依姫が拍手喝采をしていた。
頭が痛い。
なぜそうなったのか。綿月依姫の名前で何故か餅つき器が注文されていたからだ。
一応、通常の処理だったのでスタッフ達は普通に流したのだろうが、ちょっと待て。
餅つき器なんてものは月の都でいくらでも高性能なものが買えるだろう。
もちろん、餅をつく前にある程度、餅つき器で処理してから突くという
話は幾らだって聞くから最初はそうするのかと思ったら、奴ら全力で
餅つき作業をサボっていた。
当然、機械でやったのと人の手(?)でやったものは少しだが違いがあるらしく
機械がやっていたことは速攻ばれた。
機械は依姫の手により両断されて、兎たちはわーわー騒ぎながら散り散りに
事情を説明しろと言われたので注文書と納品書を見せて話すと
依姫頭を抱えて蹲っている。
私が蹲りたい気分だ。
月兎たちに永遠亭の兎たちはきちんと餅をついているぞと言うと、
あいつら全然違う歌歌っているよと言われた。事実なだけに一瞬論破されそうに
なったが、だが突いている事実は変わりないと言って正面突破した。
我ながら酷い言い方だ。
本当は煮た里芋を奉納して誤魔化していることを月兎は知ってる可能性は
高いが一応餅をついているところも目撃したことがあるからやってることにした。
依姫が地上の人もこう言ってるというが穢れあるとか余計なことを言って
少々気分が悪い。それでも一応スルーする。
だが概ね依姫の言ってることが正しい。幾ら餅米から餅にするのは大変
なのは分かるが、省力化に程がある。
ここまではよい。 一度戻ってとんぼ返りでもう一度月の都に着いたら
なんと餅つき器が修理されてまた使われていた。
依姫の刀の切れ味が良すぎたのか切った場所が良い場所だったのか。
どうでもよいが、後で聞いたらそういうのを補修する道具があるらしい。
変化が殆どない月の都ならではの道具ということだろう。
当然の如くこの機械は返品処理されることになった。
お金は貰ってるし特に問題ないので社内で使うことにする。
南無。