□月 ●日  No1486 櫻崎ひらのんの月面旅行なう


今日は霊能局みんなで研修という名の日帰り慰安旅行に行きました。
題して「浦島の足跡を辿る竜宮城への旅」です。
企画書は私が書きました。新入りのメガネさんとお話ししたときに
竜宮城の話をしたのですがそこに出てくる料理がなんとも美味しそうだったので
ならいっそ一緒に行ったらどうだろうという話になったのです。


今日になったのは今日が一五夜の満月で、無理に結界を突破しないで済む分
燃料代と旅費が減るためです。 
朝の出迎えをソーレンにお任せしたのですが、彼が前日壮行会と称して
八雲商事の呑兵衛達と呑みに行った為酒気帯びのヘリコプターに乗る羽目となり
とても怖かったです。 いざとなったら脱出して空を飛ぶなんてこともできるのですが
さすがに顕界で空を飛ぶのは御法度ですからね。


予定通りの列車に乗ることが出来ましたが、八雲商事の職員さんは不思議そうな顔をしていました。
戦争でもしに行くのかと言われましたが、慰安旅行と言うと、
「羨まし、いや前言撤回」と言われました。確かにあそこの人たちが慰安旅行でお酒が入ったら
何かと収拾つかないのは目に見えていますね。 
その人が何が言いたいのかなんとなく分かるのです。


出発は始発と言うことで前日殆ど寝ていない人も結構いる模様。
移動中はみんな寝ていました。 遠足気分で大興奮していたのは殆ど居ませんでしたね。
これが社会人の旅行だとしみじみ思いながら私も寝ていました。


さて、肝心の竜宮城ですが、実は綿月邸のことを竜宮城だと言っていたのですね。
私は竜宮城という施設があって、そこに旅行だと思っていましたから思いもよらぬ光景に唖然としてしまいました。
一応穢れを軽減するというケープを着ての移動でしたが、月の都はまるで幻想郷の都市みたいな面持ちで
大規模店舗よりもパパママストアばかりのような雰囲気です。 もっと近代化していると思いましたが
お金のやりとりなどは生体認証を使っていまして、ローハイミックスを地でいってる感じでした。


浦島が体験したという数々の宴や料理も再現させていただきましたが、まさか宴がテレビだとは思いもよりませんでした。
確かに当時の人たちにすれば映像と現実に違いがあるとは思えません。 もちろん大画面で原寸大で
人物は動きますからその辺は流石月の技術と言ったところです。


月の料理は結構口に合いました。ちょっと濃いめの味は月の低重力に合わせた物だそうで、お陰で結構喉が渇きます。
例の桃も食べさせて貰いました。 桃食べ放題という企画でしたが、みんな数個食べるので精一杯だったようです。
味は外の世界の食べ物とあまり変わりません。 浦島さんは季節依存の食べ物しか食べられないのを考えると
確かに竜宮城の食事はとても豊かでご馳走に見えるでしょう。 私たちの目から見るとそれは顕界の食事と
そう変わらないように思えました。 それだけ物流が追いついたと言うことかも知れません。


ほとんど食べ歩きツアーみたいな物だったので帰りはみんなで元の重力になったとき体重がどうなるか
想像して皆で鬱になってました。 一応月からカロリー吸収抑制剤を貰ったのですが。これが効くかどうか
微妙なラインです。 太ってないといいなあと思います。
観光はあまりできませんでしたが今度はもっと別な施設に遊びに行きたいと思います。
これで、レポートがなければ本当にただの旅行だったのになあ。