□月 ●日  No1488 見かけによらない


道を歩いていると、突然、みすぼらしい姿をした男から飯を恵んでくれとせがまれて色々焦る。
関わり合いたくないので走ってその場を離れ、先の茶屋で一休みしたら
その人物に関するうわさ話を聞いて色々戦慄する。
その昔その人は羽振りの良い、地主だったのだが、秋姉妹の怒りを買ってあっという間に没落したという。


こうした場合、生育途中で天候コントロールをするのかと思いきや、その実態は冷酷と言うべき
酷い方法だったようだ。 すなわち、実って収穫を待つばかりのところに台風がやってきたのである。
ある程度の投資が終わって資金回収だけというところを狙っているところが嫌らしい。


皆は秋姉妹のことをどう思っているのだろうか。
多くの人が彼女たちのことを人畜無害で人間にとって恵みをもたらす平和なカミだと思っている。
彼女達は弾幕戦では大して強くないし、食いしん坊で冬になったら部屋を掃除しないといけない。
寝相は悪いがお陰で目の保養にはなる。


だが、無害っぽい彼女の特性は表向きの姿だ。
うちの会社にある危険度ランクで見ると秋姉妹のスコアが実は風見女史とほぼ同等となっている。
朝倉の話だと彼女達を怒らせた場合のペナルティが洒落にならないレベルなのだという。


彼女の恐ろしさの本質は食料を貯蔵しないといけないこの時期の収穫量を大きく左右することができることにある。
これは即ち、彼女達を怒らせたら冬に飢え死にする覚悟をしないといけないことを意味する。
仮にしなかったとしても莫大な経済的損失を被ることになる。


彼女達は豊穣のカミだが、一度実った作物も駄目にすることができることは意外と知られていない。
寧ろ彼女達の恐ろしさはそこにある。 彼女達がもたらす台風は自称現人神が使う奇跡とほぼ
互換性があると言われる。 フルスペックの秋姉妹は一時的ながら自称現人神と同等のことが可能である。
つまるところ、彼女のさじ加減一つで人間を飢え死にさせることも彼女には容易なのだ。


結局その人物が何をしでかしたのかは分からないが、少なくてもこの男は今年の冬も越せないと言われている。
借金を返すために土地建物を手放して、少ないお金は食料を買っただけで終わったらしい。
慣れない採集で中毒になって今では酷い有様だという。


こういうことがあるので幻想郷の妖怪達と付き合うときは弾幕だけで考えてはいけない。
弾幕戦に勝ったら結果的に命を奪われたということになったら洒落にならないからだ。
妖怪と接する時にはとにかく慎重さが必要である。