□月 ●日  No1512 ゾンビご一行様


たまに幻想郷の生き物が顕界に出るときがあるが今回の場合はちょっと大規模すぎである。
そいつはゾンビである。 まさか生でゾンビに出くわすとは思っても居なかった。
ゾンビは幻想入りしていない妖怪の一つだ。人間がゾンビに扮しやすいし
映画でも大人気だったりするので、幻想入りすることなくたまにこうして顕界に出現するのである。
しかも大量に出現してもあまり違和感がないのもゾンビの特徴だ。


顕界にいるゾンビとは実は生き返った死体ではなく、ウイルスに感染した吸血鬼の属性を持った
人間であると言われる。 実際のところゾンビのように知能が全くないわけでもない。
知能が吹っ飛ぶ奴も居るにはいるが知能が吹っ飛ばないゾンビもいるし、言葉も通じる
ゾンビもいるのでここまで来ると、幻想郷で第二の人生ならぬゾンビ生を生きた方がいいだろって
奴も結構居る。


妖怪が携帯電話で話しているのも別に珍しくない光景である。
今日出くわした大量のゾンビはショッピングセンターを占拠しているものの
誰もいないレジは利用せずにセルフサービスレジを使って、クレジットカード決済で物を買っていた。
なんでも幻想郷から迷い込んだのだ地底の妖怪だという。
物怖じしないので、今はゾンビも市民権を得たのかと腕を組みながらうんうんと頷いている
奴も居た。 それはそれで世も末だ。


30分ほど打ち解けて談笑していると、変な扮装をした人が水晶玉やら十字架やらを持ち出して
訳が分からない儀式を始めている。
ゾンビの一人がどう突っ込めばいいのかと尋ねたので、ここは苦しんでいる振りをしながら
バスで移動したらどうだろうと提案した。


ゾンビの一人からはあんな商売が今時成り立っているのかとしみじみ言われた。
自分が生きている時でああいうものは卒業しているのではないかと言っていた奴は1880年生まれの
ゾンビであった。 科学が発達して凄いけど思ったより凄くないというのが彼の発言だった。


結局ゾンビ達一行を地底まで送ることに。 途中、霊能局からの依頼で派遣された一輪嬢に
呆れたような表情をされたが、そんなことは知ったことではない。
結局顕界土産をたんまり持って帰ってゾンビ達はご満悦だったことを記しておく。