幻想郷には60年ルールと呼ばれるルールが存在がする。
どんな堅牢なシステムでも60年も経過すればシステムは疲弊し
賢者達の思考は硬直し、側近はまとめて茶坊主化する。
経営環境は大きく変わり、状況は変わってしまう。
八雲商事にも60年ルールがあることを黄昏酒場にいるOBたちから
聞くことができた。 驚いたことにあの隙間妖怪が経営の最前線にいたらしい。
今では社長の名前こそあれど一線を退いているので意外である。
列車のルールも大きく変わっている。私が丁度入社した時の話だが
これまで中間管理職狐など結界突破には八雲に依存するシステムを
採用していたが、列車単独での結界突破も可能になるなど
よりフレキシブルに対応できるようになっている。
これは幻想の世界ではかなり大きな賭けであることに違いはない。
このシステムにより真っ先に起こったのが事故が増えたことである。
それは列車の事故というよりは、幻想入りする外来人が急増したというのが
ただしい。 これも意図されたことである。
外来人の多くは妖怪に食べられるが生き残った人たちは幻想郷の社会に
大きな影響を間接的ながら与えることができる。
食べられた人間たちだが、彼らの持っている情報も
妖怪にコピーされるケースが多い。幻想郷に住んでいる妖怪が
現代語を喋れるのはそういうシステムがあるからだという話もある。
月面への対応もかなりフレキシブルになったという。
月面大戦争になった背景の一つに人間達が月を畏怖せずに利用しだしたことが
挙げられる。 月人が気がついたときには手遅れになっていた上、
妖怪達もバランス取りのために月人を利用する必要に迫られたと言われる。
タイミングを60年システムに合わせたのは決して偶然ではないようだ。
余談だが、隙間妖怪が月人に敢えて土下座して見せたのも、60年システムの
崩壊を妖怪に印象づけさせるための政治的パフォーマンスだという向きがあるらしい。
彼らの一挙一動にも意味があるということなのだろうと思うと面白い。