□月 ●日  No1983 八雲商事という概念に関する基礎理論


世の中に完全な隠れ里はまず存在できない。
森の中に生きて、安定した気候でもあれば不可能ではないだろうが
生活レベルはどうしても安定しないだろう。
どんな隠れ里にしても貿易を行わない限り、その場所を維持することは不可能に近い。


幻想郷と呼ばれる土地も例外ではない。
一定の広さを持つこの土地を維持するためにはそれなりのコストを払わないとならないだろう。
安定したシステムとして構築するにはそれが属人的であってはならない。
組織化し、システムとして組み込むのが一番だ。
博麗大結界が今の姿になったのは明治というがそれは技術的に可能になったからに過ぎない。
陸路での大量輸送システムが構築されて初めて幻想郷は幻想の世界になったのである。


八雲商事とは数ある物資供給システムの一つに過ぎない。
博麗大結界の一部品でもあるこのシステムは人間社会と貿易をする吸衝材である。
仮に八雲商事が破壊されたとしても幻想郷には複数の物資供給システムを持っている。
システムは一カ所に依存してはならない。
博麗大結界完成時に発生した妖怪同士の小競り合いは物資不足への恐怖感と、物資を供給する場所が
魔界に完全依存することへの反発が招いていたことは知られた話であった。


八雲商事は幻想郷で不足するであろうナトリウムをはじめとした海由来の金属類の補給
外部から遮断されたことによる病気への耐性の低下を防ぐ検疫システム
幻想郷と外界の技術的、科学的ギャップの是正などが主目的である。
外界からやってくる物資は技術レベルから、何が一番コストが安価なのか移り変わる特性がある。
当然コストが安いものを運用することが求められるが、それには文化レベルがある程度
外界に追随していないとならない。 そのため技術的交流なども八雲商事を通して行われることが
増えたからである。


八雲商事でスペルカードシステムの研究がなされるようになったのは実のところ。外の世界と
幻想郷の間に立っているため、最新技術が得やすい環境であること、そして資金が集まりやすい
環境にあることが理由に挙げられる。スペルカードシステム研究は八雲商事の副産物に過ぎないが。
彼らのお陰でオープンソース化が進み、現代では妖精でもスペルカードを利用できるまでに至った。


ここで重要なことは全ては合理的考え方が生み出したものであり、そこに特段の陰謀などが
有るわけではないことである。
八雲商事とは幻想郷を維持するために必要とされる仕組みの総体であり単純なものの集合体
ゆえに複雑に見える仕組みなのである。