□月 ●日  No1513 謎の手紙


株式会社八雲商事 妖怪と直接接触するこの会社を快く思っていない奴も一応はいる。
この日、うちの会社に何故か脅迫状が届いて皆で騒然とする。
見れば何処かの霊能者を名乗っており、我々のことをインチキだと主張している。
訴えるとも言っているが、親方日の丸を呼び出せるのは寧ろ我々だ。
威力業務妨害でこの脅迫状を持って行った方がずっと効果がありそうだ。


こういう脅迫状は本当のところそれほど珍しくない。
本職の霊能者ならうちの会社が本当は何をやっているのかよく分かっているから
この人物はモグリであることは間違いない。


失笑するのはむしろこの先の展開だ。
御神体の裁きを受けるであろうと書いてあるのだが、こいつが知り合いだったりする場合である。
ふとケロちゃん帽のカミ様を頭に浮かべて、地面で駄々こねてじたばたしているのを思い出し
裁きってなんだろうと思う次第。


それにしても何とも数が多い。壊れたレコードのように同じ事を書いているが
いずれも実筆で書かれている。 しかも毎回バリエーションに富んでおり
飽きさせない作りになっている。
あまり数が多いのでとうとう切れたのはなんとボスだった。


聞けば他にも色々と嫌がらせをしているのだという。
ここには書けないほどの低次元な代物で、思わず暇人だなあと思う次第である。


仕方なしに幻想郷に手紙90リットル一袋を持って行く。
自称現人神の家でこれを見せたら、ケロちゃん帽のカミ様が「知ってる知ってる」と
言っていたので少々驚いた。
それほど信仰を与えていたのなら複雑な気分ではある。
信仰はカミを維持するために必要な物である。枯れ木も山の賑わいとはよく言った物で
こんな奴でも一応、カミ様の身体を維持するのに有効なのだという。


で、こいつの素性はなんなんだと言うと
霊感商法で細々とやっていると言われて、何故か急に可哀想になってしまった。
恐怖を煽っているようだが、売った物がクーリングオフで戻ってきているものも
あるのだという。 一応壺があると言われて写真を見せられたのだが
そもそも実物じゃなくて写真というところが色々アレだ。


どうすればいいのでしょうと尋ねると、ケロちゃん帽のカミ様が手紙にさらさらと
文章を書いてこいつを送ってくれと言う。
どんな内容だと聞いたら、「呪い殺す」と書いておいたと言われた。
それこそ悪戯じゃないですかと反論したら、
「私の場合、脅しが現実になるから」と答えられて今目の前にいる連中の実態を
思い出してぞっとした。