とうとう来るべき時が来た。
所謂部署内の改装工事である。
月面の技術が入ってきて、改良されたのは列車だけではない。
社内の機材関係も大幅なコストダウンが図られるようになった。
今回の改装はかなり前から噂になっていたし、他の部署も既に改装を済ませているところがあるらしい。
そもそも幻想郷だからといって過去の技術を使わなきゃいけないという謂われはない。
はっきり言って社長である隙間妖怪は懐古主義どころか新し物好きである。
幻想的であるなら、オーバーテクノロジーでも問題ないのである。
オーパーツなんかそうだし、常温核融合なんかもそうだったりするのである。
まあ、改装といってもやり方はとても原始的だ。
机の中を取り除き、移動する。 この辺は社員がやらないと駄目だ。
机の中に色々なものを入れている人が多すぎるからだ。
しかも想像通り、朝倉がいないときている。
多分発掘された伝票の処遇についてこってり絞られているのだろう。
朝倉で止まった伝票は最近は再発行して貰っているのであまり問題ないのであるのだが
やはり見るとインパクトはある。
それにしても腕力のある妖怪は便利だ。
冴月が片手で机を持ち上げて移動している様は流石妖怪である。
問題は野郎の分の机は運ばない事である。
同僚が私の分も運んでくれと頼むと、「男なんだかこんな時位力仕事しなさい」と
言われてしまう。 彼女の外見も相まって地味にきつい発言だ。
机が取り除かれると電気工事屋が配線処理を行うのだが、
ここで八雲商事ならでは光景を目にする。 なんとスペルカードで配線を引いているのだ。
スペルカードは理論上弾幕の構成部品を自由に設定できるので、
レーザーの代わりにケーブルを設定すれば確かに綺麗にケーブルを張ることができる。
人間なら数十人数時間掛ける作業を数人で一分ほどでやるのだから恐れ入る。
ケーブルを張ったらその上に床パネルを置いて接続作業をする。
パネルも弾幕になっていて見ていて気持ちがいい。
高質量弾幕は多々良小傘に採用された新技術だそうだが、とても見事な省力化だと思う。
かくしてわずか一日で改装工事は済んでしまった。
それにしても外見上は改装といっても机の位置を変えただけなのが何とも悲しい。
コンピューター関係はとても便利になったがいまいちありがたみが沸かない。
ボスに机も近代化しましょうと言ったら、使えるのに捨てたら駄目だと言われたのだった。
ローハイミックスとはよく言った物である。