□月 ●日  No1521 いつの間に


霊能局から、幻想郷に謎の資金の流れがあると言われて大慌てで調べてみる。
ふたを開ければ何のことはない。出版社からの印税だった。
隙間妖怪の口座で止まっているこのお金、当然幻想郷で使えるわけではないので
何の本の印税なのか、隙間妖怪に尋ねると香霖が作った本を出版社に持っていったらしい。
小兎姫も私も朝倉もみんなで目を見合わせ唖然とする。


確かに香霖は私に本を出版するとは言っていた。幻想郷に住んでいる連中は価値観の螺子が
どこか吹っ飛んでいるのできっと顕界の人たちがみたら、トンでも科学者とか
ミステリー研究家とかUFO研究家のような扱いを受けるであろうと思っていたら
思いのほか受けているらしい。


本のタイトルを問い合わせて、通信販売で買ったやつがこうして目の前に届いたわけで
どんな本が出てくるかと思ったら、そこにはいわゆる女の子の絵が前面に押し出された
代物だった。 これが噂の「萌え」というやつか。
出版者に聞いたらなんとそこそこ以上に受けているらしい。
印税の額も結構なものになるようで、ニーズがあるのかと思って関心することしきり。


それにしても内容をさらっと読むと私が書いていることとあまり変わっていないことに
朝倉ともども思わず噴いてしまう。
しかし、こちらのほうが表現がナチュラルか、幻想郷にすんでいるあいつらはもうちょっと
始末におえない存在だと思うがそこはあそこに住んでいる連中の意見である、
つまり我々が問題だと思っている部分が分かっていない。


そこでわかったことだが、やつの知識に色々問題がある点はこの際おいておくが
実は野郎の客のことを一切書かずに、女の子ばかりを取り上げているのは如何なものか。
一定水準以上の美少女だからといって、そればかり書いているのはいくらなんでも
公序良俗ってのはどこへ行ったのかと思う。


朝倉にそのことを話すと、これはこの絵が好きな人に宛てて作った創作ってことになっている
からそれでいいのだといわれた。 なるほどと思う反面、やつはロリコンだったという
ゆるぎない事実だけが頭をよぎった本だった。


現在会社の食堂でさらし者になっている。