□月 ●日  No1589 もうひとつの真実


新年会を開催するに当たって今宵、あの聖白蓮を呼ぶことにした。
彼女達がやってきて早二年あまりが経過して、封じられていたころとの
ギャップも徐々に埋まってきているのは間違いないからだ。


もちろん、彼女が自分の思惑を持って封じられていたことは朝倉理香子から尋ね聞いていることではある。
だが、彼女が妖怪と人間の架け橋になろうとしていたことも確かである。
だから、今回の件で彼女がとても怒り出すことは覚悟の上だ。


現代において何故妖怪が人間の姿、とりわけ少女の姿をしているのか説明しないといけない。
理由は簡単なことで、人間は異形の姿に嫌悪感を抱き、勝手に疑うからである。
この勝手に疑うというのが問題だ。 
疑いは闘争を生みだすことは必定だからだ。


幾ら相手が心優しい者でも、外見や印象というものを拭い去るのは相当のエネルギーを要するし、
彼らが仮に相手に迷惑を与えることがあれば、その報いは倍以上になって帰ってくる。
そもそも、人間とは弱い生き物であり、想像以上に非寛容だ。
そうしないと自分が守れないからだ。 妖怪を守ろうと考えるのは結局自分を守る自信があるからこそ
言える一種のおごりに過ぎない。


だから現代の妖怪はとりわけ現代社会に溶け込みその一部となることに主眼を置いている。
経済システムに順応し、妖怪の力を金の力へと変えてきた。
金はシステムでロジカルなものであるゆえ人間と違って裏切ることもない。
もちろん金だけで人間を動かすのには限界がある。 ロジカルであるがゆえに
感情的に拒否に会えばそれも無力だからだ。


だから八雲紫達賢者は幻想郷を作り、まだ力を持っている妖怪達を隔離する空間を
作ってしまった。
知らない物は探さない そして幻想郷という空間に一時的にしろ聖白蓮を閉じ込めた。


彼女は静かにこの話に耳を傾けていたが、やがて朝倉理香子と妙な遊びに興じ始めた。
私はこの件を見なかったことにした。 それくらいの感情の吐露があってもよいではないかと思ったからだ。



     
     


寝ゲロを除き。