□月 ●日  No1591 だしがきいています


巷では七草がゆの日だというので、うちの社員一同おかゆを食べているのだが
どうしても腹持ちが悪いため色々手を出してしまって何の為のお粥なのか
さっぱり分からない今日一日。
新年になると、取引先が挨拶にと色々なものを持ってくるのでそれらを消化するという
意味不明な展開となる。
こういった食べ物を幻想郷にお裾分けすれば色々楽だろうと思うのだが
なかなかそうはいかないのが実情である。


さて今年のトピックスはというと地霊殿から七草の発注があったということ。
どうも灼熱妖怪が周囲の妖怪から聞いて来たのだそうで、
その謎の食べ物である七草粥を一度で良いから食べたいと言いだしたらしい。
地霊殿にはそういう風習はないのかと尋ねると、そもそも七草はとれないし
地底の温暖且つ安定した気候の前には抵抗力を付けるための追加ビタミンも
あまり必要ではなく、新年の食べ過ぎに関してはそのまま治るのを待つだけという
状態だったらしい。


というわけで七草粥地霊殿に届けられたのだが、
そのあまりのシンプルすぎる食べ物に、文句を言ったのはやっぱり灼熱妖怪だった。
彼女は七草粥はなにか美味しい物だと思っていたらしい。
もちろんお米を使った食べ物だからそれなりに美味しいものではあるのだが
彼女の想像とはかなり違っていたようだ。


何かが足りないと言う、灼熱妖怪。
おもむろに左腕を鍋の中に投入した。いくら熱に強いとはいえ必死に止めようとするが
腰を引っ張るつもりが胸を掴んでしまい思わず自分が仰け反ってしまった。
駄目すぎる。


少しマシになったといって出された粥からは謎の油が浮いていた。
理論上は鶏ガラスープと言うことになるのだろうが
あの放射能マークが書かれた棒である。
私に振る舞っておきながら勝手に自分で食べて美味しいよと言っている。
言葉に出来ない。


この粥は地霊殿の主人と死体運び猫にも振る舞われたが、とりあえずこの物体が
どういう風にして出来たのか口をつぐんでいたところ、
当然のことながら主人に察知され、少々問い詰められたことは言うまでもない。


死体運び猫がそれらやりとりを無視して粥を口に運ぶと 美味いって叫びだした。
あっという間に平らげてしまうのを見て、主人も口にしてみる。
灼熱妖怪と目を見合わせて言った「これは美味い。」


食べるのに夢中になっている面子を無視してとりあえず地霊殿を後にしたが
みんな美味い美味いと言われると気になって仕方ない。
なにか損をしたような気がしてならない。