八雲商事の面子と言っても大きな移動の時はやっぱり飛行機を使う。
スピードは速いし、第一疲れないというのがその理由だ。
この日、ちょっとした見本市見学と言うことで飛行機を用いたのだがここでちょっとした問題が発生した。
いや、普通に考えれば緊急事態発生なのだが。
それは所謂ハイジャックだった。何人か居るらしく後ろの方で大人しくしろとかと言っている。
横で朝倉が運が悪い奴と言っていた。たぶんそれが全てを現していると思う。
パイロット室は案の定閉鎖されていた。テロ事件が多発している現代においてパイロット室が
緊急事態に合わせて完全閉鎖されていることを分かって無いのだろう。
開けろと言っても当然開けない。
こちらはビジネスクラスなので、たぶん前の方でも色々もめているだろう。
ただ、ファーストクラスにもボスとか色々ヤバイや連中がいるので多分大丈夫な気がする。
不意に銃声が聞こえた。 最初は周辺が騒然となったが、やがて男の声で大騒ぎが始まった。
たぶんうちの妖怪に手を出したのだろう。
後ろの方で怒号も聞こえる。
飛行機を落とすぞというテロリストの声に、多分経理部の東村の発言だと思うが
「どうぞ、私たちは脱出しますので一向に困りません。」
とか恐ろしい言葉のやりとりがある。 いや乗客は脱出できないだろうと突っ込んではいけない。
あちこちで想定外の展開が起こっているせいか ハイジャック犯が浮き足立っていることが見て取れた。
彼らの目的を聞き出すのは中有の路になりそうな案配である。
私の真横でハイジャック犯が血を流して倒れていた。
奥で、この人食べてOK? がまんなさいというやりとりが 繰り広げられている。
しかしそれにしてもハイジャック犯は運が悪い。 今回の乗客の半分が妖怪変化という
百鬼夜行の近代版みたいな代物を乗っ取るのはいかんせん無理があった。
飛行機は緊急着陸したが、ハイジャック犯の多くは気絶したかあの世に旅立ったかしていたのだった。
乗客にけが人は居なかった。
あとで座席に銃弾の跡があったことが確認されたがそれはそれである。