□月 ●日  No1730 間違ってないけど間違ってます


朝倉が横断歩道を歩行中に自動車に轢かれたというので、自動車の運転手を見舞いに行く。
朝倉はというと最初は周囲の目を気にして痛がっていたが、周囲が呼んだ救急車に
乗せられて、一応病院へいったものの怪我らしい怪我はしていなかった。


運転手は大けがを負っていた。それもそのはずだ。朝倉にぶつかるというのは
電柱に衝突することと同義である。彼女はとっさにスペルカードを実行したと思われる。
一時的に生じるバリアーで自動車はまるで堅い物体に触れた様に大きく抉れただろう。
自動車は確実に廃車である。


ボスはこの件で顔が真っ青になった。朝倉に落ち度はない。青信号で歩道を渡り
自動車は信号無視で突っ込んだ。しかし自動車は大破した。
警察も保険屋も騙さないといけない。


こうした場合は、霊能局に連絡することになっている。 櫻崎が電話に出たら
やはり真っ先に自動車の運転手のことを心配された。
大体考えていることが同じで思わず噴きだした。
彼女から、警察に連絡して事故証明を破棄して貰う必要がある。


自動車は修理不可能なので新しい自動車があてがわれた。一応事故を起こした人には
一割支払いでいいと言っておいた。ぶつけた人物は唖然としていた。
自分が大けが負っていたことは自業自得と思っていたが、交通刑務所行きは
覚悟していた様だ。


次に治療班が病院に隠れて遠隔治療を施す。所謂心霊治療とも言われるこの方法は
一種のテレキネシス的な方法で患部を治療する。
病院から得たCTやMRI画像の鮮明化に伴い可能になった技術である。
一週間程度で退院できる程度に治療する。


かくして、この人物は何もおとがめなしで退院することになったのだが
口止め料を渡されてその人物はきょとんとしていたことは言うまでもない。
朝倉はだが、自動車の運転手が無事で良かったと頷いていた。
もちろん誰も心配していない。